トルコのアンカラで開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の席上、中国人民銀行の周小川総裁が、株式市場の動向に関する説明の中で「バブルがはじけるような動きがあった」という趣旨の発言をして市場から大きな注目を浴びる結果となりました。
とうとう中国の幹部がオフィシャルに景気の減速、バブルの崩壊を口にしたことに衝撃が走り、また株価の下げ要因となってきています。
東京市場の日経平均はGPIFとその周辺のPKOが買い上げても上値で売り浴びせる外人投機筋との猛烈な戦いになっており、上海市場が開く10時半からは完全に中国株価連動相場へと豹変する事態に陥っています。
また政策判断をオフィシャルに認める発言がでるということは、なんらかの政策変更を打ち出してくるのではないかといったほのかな期待にもつながっている状況です。
中国株バブル崩壊のきっかけは信用取引のレバレッジ規制が発端か
中国上海株は6月12日に年初来59.7%高の5166ptという空前の高値を付けていますが、それをピークに坂道を転げ落ちるように下落し、7月8日には3507ptの安値を付け、直近では習近平が死守するように指示していたといわれる3000ptすらも割り込む勢いとなっています。
この発端はノンバンクからの融資で信用取引を行っていた個人投資家のレバレッジがほぼ10倍近くに達していたことから、このレバレッジを引き下げるよう規制をかけたことに端を発しているようです。
当局の突然のレバレッジ規制で、逆にそれが手持ち株式売却を強要する結果となり、「売りが売りを呼ぶ」下げ相場に火を付けてしまったようで、そこからの転落劇はみなさんご案内のとおりの状況となったわけです。
中国株は7月上旬までの3週間で時価総額3.2兆ドル(約392兆円)が吹き飛ぶこととなりました。
これは本土の証券取引所で1分間に約10億ドル(約1213億円)ずつ失われた計算で、ちょうど中国の外貨準備額がすべてなくなってしまったような規模です。こうした金融バブルの崩壊を人民銀行の総裁が認めだした事で市場に動揺が走るのは、ある意味当然といえます。
東証の外国人投資家は過去最大の売りこしへ
8月末からの東証株価の動きは個人投資家と機関投資家が買い向かい、外人が過去最大の売り浴びせをしかける相場展開となっています。
この構造はもっとも株価が上がらないパターンで、案の定中国ネタがでる度に日経平均は極めて大きなボラティリティを伴いながら下落に転じることとなっています。
(9/9日経平均株価終値で1,343円上昇の前日に書いた記事です。)
上の表を見ると一目瞭然ですが、8月第四週、つまり24日の大暴落後の投資主体者別売買動向を見ますと、外国人投資家は現物株式▲7070億円、株式先物▲1兆1760億円で計▲1兆8831億円の極めて膨大な売りこしを行っていることがわかります。
8月2週から4週までの3週間では現物・先物合計で実に3兆6853億円の売りこしをしているのです。特に現物株に大きな売りこしが出始めていることに注意が必要となってきています。
外人投資家が単なる先物による空売りではなく、ポートフォーリオのコアになる部分を切り崩し始めて換金に踏み切っていることが気になるところです。
これは世界的な傾向ですが、リスクが発生した直後にFLY to QUALITYが起こらず、単純に投資資金が市場から現金化されて引き上げられ始めているわけで、明らかに金融市場は何かが起こることを避けるために資金引き上げで一時非難を始めている向きが増えていることを示唆しています。
日本株に連動しやすいドル円がこのまま上昇するのは、極めて難しそうな相場状況になってきていることがわかります。
参考にならなくなった2004年利上げ後の相場の動き
これまで2004年「グリーンスパン議長」時代の利上げ後の株価と為替の動きが今回の米国の利上げ後の動きの参考になるとして注目されてきましたが、いよいよ中国がオフィシャルにその様子の可笑しさを開示し始めている中での利上げでは、ほとんど参考にならない状態に陥りそうです。
すでに利上げ前から金融緩和で市場に目いっぱい出回ってしまっている資金状況も含めて、今回利上げが行われるとこれまでとは異なる動きが示現する可能性も考えておく必要がでてきています。
米国を始めとして株価が下落することは間違いありませんが、中国経済の動きがこれにオーバーラップしてくると為替は債券金利ではなく株価に連動して大きく下押しする可能性もあり、やっと債券との連動というノーマルに戻ったかにみえた為替と債券の相関関係がまた崩れだしている点にも注目していくべき状況です。
米国の利上げ時期の思惑とも絡み合って中国起因のリスク問題はどこまでに何が本当なのかさっぱりわからないだけに見極めがつけにくいのが実情で、9月17日のFOMCに向けて荒れる相場は、その後も下落リスクを背負いながらの展開になりような嫌な雰囲気となってきています。
(この記事を書いた人:今市太郎)