8月24日以来、日銀とGPIFほかのPKOと思しき軍団が日経平均とドル円を買い上げる動きをしていますが、買いがおさまると俄かに売りに押され失速する場面がほぼ毎日のように繰り返されるようになっております。
下値で支えるPKOの威力にいささか翳りが出てき始めたことを多くのトレーダーが、身をもって実感し始めている事と思います。
日銀のETF購入原資はあと7000億強しか残っていない?!
日経新聞ではすでに報道されていますが、日銀が金融緩和の一環で日本株に連動するETFを年3兆円買い続けているのはご存知のとおりですが、今年は残り4カ月弱で均等に割るとすれば、3兆円の3分の1に当たる1兆円が年末までの購入額と想定されています。
ところが日銀の公表資料によれば、9月1日までに既に2兆2686億円のETFを購入済みで今年の残額は「7314億円」しか残っていないとのこと。
これまでの3日に一度337億を購入するローテーションを続けた場合、あと残りは22回分弱しか残されておらず66日後の11月中に日銀のETF買いは終了を余儀なくされることになってしまうのです。
これには、海外の投機筋も気づき始めており、11月4日に迫った郵政グループ3社の上場に向けた株価の買い支えというものを視野にいれた場合には、国債の買い入れ額はもはや増やせなくても、ETFをターゲットにして近々に日銀が追加緩和に踏み切らざるを得ないかもしれないという憶測が出始めているのです。
逆にここでなにもしなければ、かなりの失望売りや催促相場が展開される可能性もあり、微妙な情勢となってきています。
GPIF,KKRなどとの統一運用でポートフォーリあわせが進行中
KKR(国家公務員共済組合連合会)と地方公務員共済組合連合会、日本私学振興共済事業団は、10月1日のGPIFとの積立金運用一元化に向けてポートフォリオをGPIFに近づけるため、ここへ来て下げ気味のドル円をしきりに買い上げているようです。
8月25日以降の暴落後相場の不思議なドル円の買上がりよる立ち直りもこれが原因ではないかと見られ始めています。
GPIFにおける26年度運用資産額・構成割合は国債39.4%に、国内株式22.0%、外国債券12.6%、外国株式20.9%、短期資産5.1%という割合になっていますが、21兆円の運用資産を持つ地方公務員共済は単純に計算しても外物債券が40%に対し26.5%の達成率であるため、ほぼ2.8兆円の外貨買いニーズがあると見られています。
同様にKKRも7.8兆円の25.2%=2.0兆円の外貨買いが必要になります。これが9月末までにすべて実現するかどうかはわかりませんが当面ドル円の下値サポートとはなるとしても、これをすべて買いきってしまえば下支えするものが不在となり、ドル円でもPKOを期待することができなくなる状況です。
株価が大幅に下落すれば追加QQEも考えられるが・・
現状の株価レベルで本当に日銀が追加のQQEを実施することになるのかどうかが非常に注目されるところとなっています。
既に日銀が当初設定したETF買い予算から考えれば、今年の原資は限られることになりますから、この部分だけでも追加緩和を考えなくてはならないタイミングにさしかかっているのです。
日銀がなんらかの形でETFを増額するような追加政策を打てれば少なくとも日経平均はかなり下値が堅くなる可能性がありますが、このまま放置して一旦ETF買いも一旦中止させることになれば、それなりの下押しを覚悟する必要がありそうです。
昨年の10月31日から既に1年近くの時間が経過しようとしていますが、このまま見殺しにされれば官製相場も終焉を迎えてしまうことにもなりかねません。
ここからの日銀の動き非常に注目されるところとなっています。とくに今後日銀のETF原資がいよいよ枯渇寸前になれば投機筋を中心にあえて日経平均売りをしかけてくることも考えられ、それにともなってドル円が下落してもおかしくはありません。
一方でこうしたモルヒネ的な即効薬は効果が持続してもせいぜい3ヶ月ですから、長く続くものとして期待できるものでもありません。日銀の政策決定会合がこうした状況に対してどのような判断をするのかが非常に関心が高まることになりそうな秋の相場です。
(この記事を書いた人:今市太郎)