9月4日(金)に発表になった米国の8月分雇用統計において、非農業部門雇用者数(NFP)は、
「17.3万人増と予想の21.7万人増を下回る結果」となりましたが、前回、前々回の上方修正が計4.4万人だったことから、相殺勘定となり一旦は売られたものの、直後に買いに転じることとなり、わかりにくい動きになりました。
また、平均時給もインフレ期待を高めるほどの伸びではなかったものの、前年比で2%超の上昇を示現。一方製造業の雇用は予想外に減少しており夏場は調整がある時期とはいうものの不安を残す数字となっています。
失業率は5.1%と改善しており、ほぼ完全雇用を達成していることから市場は利上げを十分裏付ける内容と判断し株は大幅に売られることとなりました。
NY株式の終値のダウ平均は272ドル安で引けています。9月17日のFOMCに向けては、さらに思惑から売買が交錯しそうな雰囲気となってきていますが、抗日70周年のパレードを終えた中国・上海市場が週明けから再稼動することから、この動きも注目を集めることになりそうです。
いずれにしても、「9/17FOMC」まではかなり荒れた展開になりそうな状況となってきました。
既に市場からは資金の流出がスタート
現段階では9月利上げ、10月利上げといったことが決定的とはいえない状況ですが、既に市場からは資金流出が始まっています。ブルームバーグによりますと、8月24日の暴落をきっかけとして新興市場から既に27億ドル(約3270億円)の資金が引き上げられている状況にあるようです。
この数字はリーマン・ブラザーズの経営破綻した週である2008年9月17日の資金流出に匹敵するもので、米国の利上げを前に資金流出がかなりの勢いで始まっていることを示唆しています。
IIF・国際金融協会の集計データによると、8月の新興市場からの資金流出は推計45億ドルに達しており、7月の67億ドルの資金流入から流出へと流れが変わっていることがわかります。
9月利上げが濃厚となれば、この動きはさらに加速することは間違いなく、新興国通貨はレパトリエーションの需要だけ考えても一段のドル高に直面することは間違いないようです。
米国企業の自社株買いも終焉か
米国企業は2015年3月末までの約1年間に5000億ドル以上(60兆円)の自社株買いを実施してきており、これが高値で推移する株価を支えてきたことは明らかです。
ロイターの記事によれば、ソシエテ・ジェネラルのクォンツアナリストが700社を対象として調査してみた結果では、今年第2四半期の自社株買いの金額は前期比20%減少、前年同期も当然大きく下回る状況となってきています。
S&Pダウ指数の構成企業では、第2四半期の自社株買いは第1・四半期より30%近く下落しているという結果がでており、米国のゼロ金利の終焉は同時にこうした莫大な企業の自社株買いを終焉させることになり、株価の下支えを失うことになるのは間違いない状況になってきています。
日経225先物は2番底を形成中
米国ダウの動きを受けて日経225先物は2番底を形成中であり、週明けからの更なる動きが気になるところです。当然のことながら東京市場ではドル円がそれに連動することが予想され、NY市場の終値も119円近辺となっていますから、もう一度下押ししても全くおかしくない状況となっています。
上海市場の週明けの下落などがあれば116円方向を窺う動きとなることは間違いなく、116円を抜ければ113円が視野に入ってきます。
9月利上げが現実になるかどうかは不透明ですが、市場はそれをかなり前倒しで織り込み始めており、また各金融市場から資金が現金化して逃げていることは明らかで、薄商いのなかで大きなボラティリティが示現することが危惧されます。
17日のFOMCまでは通常以上に相場の過度な動きに警戒する必要がありそうです。
ドルストレートは全体としてドル高基調であるものの、ドル円はクロス円の下落にひきずられて円高に動く可能性も高くなっており、官製相場ですっかり慣れた下押し底値での逆張り手法が効かなくなっている可能性がでてきています。
日銀のETF買い入れ原資も残り7314億に枯渇
日銀は金融緩和の一環で日本株に連動するETFを年3兆円買っていいますが、今年は残り4カ月弱で均等に割れば、3兆円の3分の1に当たる1兆円が年末までの購入額と予想されます。
ところが日銀の公表資料によると、9月1日までに既に2兆2686億円のETFを購入済みであり、残額は7314億円にとどまることなっています。つまり量的金融緩和で増額をはからなければ買い支えもままならない状況で、日銀の追加緩和に対する期待と思惑も相場を荒らす可能性がでてきています。
現在の2番底をはたして日銀が買い支えることになるのか次第で、ドル円の動きもかわってくることになりそうで、9月は引き続き荒れ相場が予想されます。
(この記事を書いた人:今市太郎)