既に米国の金融市場ではかなり話題になっていることですが、中国が「株価を支える原資を捻出するために米国債を売っている」というのはどうやら事実のようです。
本来株式市場が大きく下げる場合には、市場はFLY to QUALITYの行動を起こして債券が買われるのが定石になっています。
しかし、今回の中国株下落に端を発する荒れ相場では、株価も下げましたが米国債の金利も上昇する状況となっており、誰かが債券を売っていることと囁かれはじめていたのです。その実態は中国政府の仕業であったようです。
8月20日を境にして急激に米国10年債の利回りが上昇しはじめたのは上記グラフのとおりですが、これは明らかに誰かが債券を売り始めたことによるものであり、大量保有国の日本が売らない以上、主犯格は中国ということか確定してきているようで、既に証券関係者からもそうした証言が飛び出しはじめています。
中国の売却額はほぼ1060億ドル規模
どうやら中国政府が自国の株買い支えのための資金捻出として売却した米国債は、直近の2週間あまりで1060億ドル相当に上るようで、もともとの保有量からは一部ですが、この動きが加速すれば米国の金利に大きく影響を与えることになります。
これは、当然FRBの利上げ政策にも大きな影響を与えることになりそうです。
中国は米国債券のほぼ20%弱を取得しており、この3月における保有残高は1兆8200億ドルとなっています。しかし、欧州の証券決済機関であるユーロクリア経由で実際に売却が進んでいることも確認されています。
したがってこの先も株価を支えるために売りが加速することになれば、現状を超える米国債券の利率上昇につながることも有りうる訳です。自国で金利をコントロールしようとしていたFRBにとっては極めて厄介な存在となってきたのが中国といえそうです。
上海株「3000pt死守」の習近平「株価命政策」はどうやらかなり本当のようで、この先も株価死守のために何を繰り出してくるかわからない状況です。つまり、市場が上海株の動きを必要以上に嫌気するのも当然の成り行きです。
外貨準備も漸減中
国債売却とともに注目されるのが中国の「外貨準備高」です。昨年6月時点では3.99兆ドルとほぼ4兆ドルに迫る勢いだったはずの外貨準備は今年7月段階の公式発表でも3400億ドル減少しています。
しかしこの数字もどこまで本当かはよくわからない状態で、ややもすればこの中から開発投資に資金が振り向けられコモディティ価格の下落に伴い、かなりの額が焦げ付いているという指摘もあります。
この外貨準備の疑惑と「米国債売り」が繋がって見えるとなると、中国が公表している数字と国の実態の差を市場が気にする展開となるのはよくわかることです。
米国の利上げへの影響は避けられない状況
9月習近平の訪米が決まっていることから、この段階でなんらかの話し合いがもたれることになるのでしょうが、中国政府の謎の資金繰り政策に市場が疑心暗鬼になっていることは間違いありません。
抗日70周年のパレード後の中国株式市場が偏重をきたせば、さらなるなりふり構わぬ政策決定が登場することも考えられ、この秋の相場状況からは目が離せないことになりそうです。
FRBがこの状況で、簡単に利上げできるかどうかを疑問視する声もでてきており、中国の動きとFRBの利上げが両輪になって相場を振り回す展開がとりあえず9月17日までは継続しそうな気配です。
9月17日のFOMCまでは市場が日替わり乱高下か?
ここのところ、日経平均ひとつとって見ても1日に600円以上の上下を繰り返す始末です。
下値でGPIFと思しきPKOが買えば、上値をレバレッジETFがらみで売り浴びせする向きもあり、何の意味もない売買合戦が繰り広げられております。
それにつられて、ドル円も上下にぶれまくる相場が続いていますが、米国の利上げ憶測と9月のFOMCの結果次第では8月24日以来の2番底を試しに行く可能性も十分にあります。
このような事情から、個人投資家も資金を増やすのか、レバレッジを下げるか、はたまたタイトなストップロスをおいて入りなおすのか、しっかりとした「リスクヘッジ戦略」を取る事が必要になってきます。
(この記事を書いた人:今市太郎)