中国市場に起因する大暴落から1週間以上を経過して、市場は一旦落ち着きを取り戻しています。
しかし、8月24日ドル円は200日移動平均線を割り込む展開となり、これまでとは必ずしも同じ相場状況ではなくなってきていることが示唆されるようになっています。
本日の記事では、この「200日移動平均線」について考えて見ることにしたいと思います。
200日移動平均線はほぼ年間の市場参加者の平均コスト
「200日移動平均線」というのはFXに限らず株の世界でも一目均衡表などによく登場します。
土日と休日を除きますとこの200日というのは過去1年間の平均を示したものであり、あらゆる相場でこの平均を割り込むということは、この1年間の投資がまったく意味をもたないラインに落ち込むことを示唆する重要なラインとなっているのです。
特に最近利益率が極めて悪くなってきていると言われているヘッジファンドなどは、200日移動平均線を「損益分岐」の重要なラインと位置づけております。
8月24日の暴落でもまず株価から始まった下げにドル円がついていき、200日移動平均を割り込んだあたりから、いきなりアルゴリズムが起動して猛烈な売り浴びせを行うこととなっています。
当日の相場をチャートでご覧になっていた方はおわかりかと思いますが、およそ人の目視で動いた相場ではない、典型的な「フラッシュクラッシュ」であったことは一目瞭然です。
それぐらいコスト面では重要なラインとなっているのが200日移動平均で、しっかりアルゴリズムのポイントにも含まれていることが明らかとなったわけです。
今回の下落で応分の投げが出たことは間違いありませんが、この下のレベルをさらに模索することになれば、大きな損切りが登場しても不思議ではない状況となってきています。
アベノミクススタートから大きく割れなかった200日MA下抜けの示現
2012年11月あたりから現在に至るまでの、ドル円日足チャート1000本を見ていただいてもわかるように、アベノミクスが始まったとされる辺りから直近まで200日MAに触れることはあったものの、明確にドル円が割り込んだのはこの8月24日が初の事となりました。
もちろんその後に相場は戻してはいますので、トレンドが転換したとまでは言えないものの、変化が訪れたことだけは間違いないようです。
逆に戻りもその辺りに留まる形となっていますから、これが抵抗線になっているとはまだ言えませんが、少なくとも「ドル円は一旦今年の天井をつけ終えた可能性は高くなってきている」ように見えます。
ドル円の上昇はFRB利上げ次第なれど材料出尽くせばじり安も
8月24日の大幅下落以来、株と為替の連動の組み合わせも変化しつつあります。
米国の株式相場が買われて上昇すればドルが買われますが、逆に売られることになるとユーロと円が買われる状況が続いており、特にユーロはリスク時のキャリートレードの巻き戻し以来、こうした動きが定着するようになっています。
ドル円の場合もFRBの利上げ期待までは上昇し、ひょっとすれば125円台まで回復する可能性も残されますが、利上げ後の株式相場の下落が進めば、円高に陥る可能性がかなり高まっている状況です。
こうしてみるとドル円の200日MA割れというのは、やはり流れを変えるポイントになっている可能性がでてきているといえそうです。
これまでの官製相場の定石~底値での逆張りが効かなくなる可能性も
こうなると、ここ2年間ずっとワークしてきたドル円は底値で買えば必ず値を戻すといった発想の逆張りも効かなくなる可能性も出てきています。
もちろん果てしなく下がることはあり得ませんから、必ず底値が登場するはずですが、利上げが絡んだ下値追いがあるとすれば、どこまで押し込むことになるのかが注目されます。
直近では116円を抜ければ、いくつものサポートラインが重なる113円台初頭まで下落する可能性は十分にあり、逆に最大限の上昇があっても123.500円レベルが精一杯とみる市場関係者が増えているようです。
流れが変わるとすれば日銀のさらなる追加金融緩和
結局この2年ほどを見ていましても、ドル円が大きく上昇したのは「日銀による金融緩和」が行われた直後の3ヶ月から最大6ヶ月だけであり、それ以外の時期は意外に膠着もしくは狭いレンジ相場が続いているのが実情です。
この秋に株価下落を支える為に「黒田バズーカ3」が出されれば状況は一変することも予想されますが、こうした支援がないままの状態ですと、結構下方向を覚悟しておかなくてはならないかもしれません。それを左右するのが9月相場になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)