8月24日のブラックマンデー暴落以来、市場では「ミンスキー・モーメント」という言葉がしきりと使われ始めています。
このミンスキーモーメントとは、故ハイマン・ミンスキー教授がワシントン大学で発表した説のことをこう呼んでいるものです。同教授の「金融不安定説」は、信用拡大 ⇒ 資産価格インフレ ⇒ 縮小・デフレ という循環を市場が作り出すと説いています。
しかもこうした動きはある出来事を起点として、徐々に浸透していき、誰も気にしないうちにある日突然問題が表面化することになります。この臨界点にあたるある出来事をミンスキー・モーメントと呼ぶわけです。
ピムコのポール・マカリーが1998年のロシア債務危機の際に名付けたのが始まりといわれますが、リーマン・ショック時のミンスキー・モーメントはBNPパリバがオフ・バランス・ビークルのひとつを凍結した2007年8月9日に起因すると言われています。
当時、NYダウはその後何事もなかったように一度は切り返しましたが、巨大株式ファンドに大量のまとまった解約が出たことが市場関係者を震撼させ、悲劇が始まっていったのはご案内のとおりです。
マクロでは過剰な流動性でもミクロでは非流動性を示現する市場
米国のQE終了後も市場にばら撒かれた過剰とも思われる資金は回収過程にはないものの、金融市場では流動性を欠く相場が各所に示現しはじめています。
ハイイールドボンド、つまりジャンク債相場はその典型で、このETFなどがデフォルトを起こせば市場はかなりの混乱を招くことになると見る市場関係者が増えています。
8月24日のNYダウの暴落とそれに連動したドルの下落は、まさにこうした流動性低下のなかでの異常とも思えるアルゴリズム主導のBid探しから、必要以上に値を下げる動きを見せたとも解釈でき、一旦は落ち着いたように見える相場が、このまま元に戻るとは俄かには想定し難い状況になってきています。
終わりのはじまりか?過去の大暴落は一発ではなく期間も長い
eワラント証券が公表しているブログに面白いデータがでています。
過去の主な巨大バブル期におけるNYダウの値動きの推移のチャートですが、一旦大きな下げがあって、回復しそうだと思って買い向かってもまたさらに落ちているのがひとつの特徴で、このチャートでは量的緩和バブルという言葉を使っていますが、いわゆる今回の中央銀行バブルが崩れるとすれば8月24日の下落では済まないことを示唆するチャートになっています。
これを見ると売りの逆張りは、成立しても安易に底値を買い拾う習慣だけはこの時期には行ってはいけないことがよくわかります。
今回の下げが中央銀行バブル崩壊の序章なのかどうかは、まだ断定できるわけではありませんが、少なくとも近々に二番底が訪れることだけは間違いないようで、それがさらに底抜けるのかどうかは今のところだれにもわからない状態ですが、下値に備えるならこれからの相場は順張りでついていくことが肝要になりそうです。
安易な買い下がりは大怪我のもとになる ことだけは意識しておいたほうがよさそうです。
不気味なことをツイートし始めたローレンス・サマーズ
「ローレンス・サマーズ」元・米国財務長官がツイッターでかなり微妙とも思える発言を呟き、市場では話題となっています。
「1997年、1998年、2007年、そして2008年のように、私たちは非常に深刻な状況の始まりにいる可能性がある」というのが内容で、サマーズは長期停滞への処方箋として、財政出動が最も有効だとも述べています。
つまり金融政策だけでは現状の景気停滞を回復できないとしているわけで、ましてこの時期に金利を上げてしまえば混乱の極みになることを暗に示唆しているものと思われます。
10月と12月で依然継続する米国利上げ観測
FRBの利上げがいつ行われるのかを個人投資家が必死に占ってみても・・あまり意味はありませんのでエコノミストに予測はお譲りしたいところですが、金利上昇を想定して、すでに新興国からは驚くほど資金が流出し始めていると言われております。
この利上げが年内に行われるかどうかはわかりませんが、それを巡って世界的に資金の流れが偏重をきたしていることだけは事実のようで、利上げ後の市場に一大変化が起こる可能性は常に頭においてFX取引をする時期が到来しているようです。
常に市場を恐れて投資していたのでは何も出来ませんが、タイトなストップロスを置くとか、投資枚数を制限する、レバレッジを下げるといった予防措置はとくに9月の相場では必要不可欠なものになりつつあるようです。
(この記事を書いた人:今市太郎)