8月11日から3日間連続で不意打ちとも思えるような形で行われることになった「中国人民銀行の人民元切下げ」のおかげで為替市場は、大きな混乱に見舞われる事となりました。
当座はドルが買われ、円も売られることとなりましたが、気がつくとユーロに買いが集まるようになり、今度はドルも売られて、円が買われるといった動きに転換する事となりました。
リスク回避からドイツ2年債への買いも急激に進むこととなり、ドイツの2年債金利は、8月12日には「-0.290%」と過去最低水準まで利率を下げております。
本来これだけ金利が下げれば、ユーロ買いにはならないはずなのですが、市場では大幅にユーロが買い進まれる事となり、1.12を超えるところまでオーバーシュート気味に相場を戻しているのです。
ユーロ買いの大きな原因はユーロキャリートレードの巻き戻し
なかなか分かりにくいユーロドルの動きですが、これはユーロキャリー、つまりユーロで資金を調達して第三国に対して投資をしていたものを人民元リスクから巻き戻すことになり、結果としてユーロ買いが大きく出たことに起因する動きのようです。
確かに巻き戻しであれば、債券金利が低下しても無理やり買い戻してくるという事になり理屈がつくことになります。
これまでの大量のユーロ売りポジションも買い戻しのついでにまき戻し
この流れを受けて市場ではユーロ売りの巻き戻しも起こったようで、オーバーシュート気味に跳ねたのは、こうした動きで上にあったストップロスを次々つけた事も起因しているようです。
ユーロドルは動き出すと200PIPS程度は簡単に動いてしまいますので、こうした動きも1.12まで戻らせる起爆剤となっていることは間違いありません。
リスクとなれば円という構造が薄れてきている
これまでのリスクオフ市場では、まず円が買われるのが当たり前となってきたのが為替相場ですが、ここ2年間ほどのPKO相場は下押しもしないところから嫌気されているのか、今回のリスクオフ相場ではまず円買いとなっていない事にも注目が集まります。
つまり、市場における円の役割が微妙に変化していることも感じさせられる状況といえます。
今後もこうした円以外のリスク回避の動きが状態化することになると、リスクオフの時の動作を考え直さなければならなくなる可能性も出てきていると言えます。
市場では9月の米国利上げの確率が高くなっていると見るアナリスト筋も多く、ドルは放置しておいても上昇する可能性が高まっていますが、このままドル高が継続すれば米国経済への悪影響は免れない状況です。
人民元の切り下げ効果で、中国の対米輸出が再拡大すれば米国の企業収益悪化から米国政府がドル高けん制をはじめる可能性も高いことから、あえてドルに逃げないという判断をした投資家も多かったようです。
様々な条件が絡んでわらしべ長者のように上昇したユーロ
このようにユーロ買いの要因は一つではないようですが、言ってみれば独自の通貨の状況が上昇させているのではなく、様々な要因が重なり合って結果としてユーロ買いが起きている点が注目されます。
これはテクニカル的に分析してもその理由が見出せない、実に特殊な事情が絡んでいるといえます。
何かのきっかけをドライバーとして、一方向に動き始めれば当然その動きに順張りでついていくのがロンドン以降の市場の大きな特徴ですから、今回のようにユーロドル、ユーロ円は大きな戻しを示現することになったとも言えるのです。
「東日本大震災時」にドル円で円が買われた動きも分かりにくいものがありましたが、こうしたリスクオフ状態では思わぬ方向に市場が動くことは認識しておく必要があります。
特にユーロドルはすべての通貨ペアの「28%程度」を占めるメインの通貨ペアですから、一旦動きだしたら簡単には止まらない事を痛感させられるような結果を導きだしています。
(この記事を書いた人:今市太郎)