7月中には最終合意かと思われていた「TPP交渉」が結果として決裂することとなり、安倍政権の通商交渉は大きく暗礁に乗り上げる形となりました。
締結された方が良かったのか?悪かったのか?の評価は別にしても、為替市場は日米を中心として政策担当者や日銀関係者などから、様々なドル円上昇に対する口先介入発言が相次いでおります。
TPP交渉がまとまるまでは「ドル円の125円超えは難しいのではないか」と言った憶測も飛び交っていましたが、今回この交渉が合意に至らなかったことで、市場には少なからず影響がでることが考えられ始めています。
オバマ政権下での交渉成立は事実上不可能か
米国の政権末期というのは、だいたい何も新しいことが決まらないで終焉するのが過去の事例です。
今回の参加12カ国の会合ではいいところまで話は進んだという見方がある一方で、医薬品に関する知財ルールや乳製品関連の貿易方法など、各国として譲れない根本的な部分での対立を回避できなかったことから、この先8月以降に交渉を再開して今年の決着にこぎつけられるかは、かなり不透明な状況となってきているといえます。
とりわけ乳製品に関しては、ニュージーランドがこの1ヶ月だけでも乳価が前月比で6割も下落するという前代未聞の状況に陥っており、ニュージーランドにとってみれば、乳製品は日本における自動車輸出に匹敵するほどの重要項目であるだけに、今後の交渉で簡単に妥協点を見出せる状況にはないという関係者の見方もでています。
一旦ドル円の上限に対する関係者の口先介入は後退?
日銀黒田総裁が124円半ばを過ぎると・・口にした牽制発言も、もとを正せば政府のTPPを睨んだ為替政策が大きく絡んでいると見る向きが多い状況ですが、今回のTPP交渉の一旦の破綻でその開始が見えてくるまではこうした発言も陰を潜める可能性がでてきています。
また9月に入ると本格的な米国大統領選挙の動きが顕在化し、なにかにつけてドル高の牽制が米国サイドから出てくる可能性も迫って来ている為、8月がドル円のピーク付けの最大のチャンスと見る業界関係者も増えています。
ポイントは7日NFPの結果次第
7月31日のNY市場では米国の「雇用コスト指数」などという、日頃あまり注目されない指標の結果が著しく悪かったのをきっかけにして「LONDON FIX」でのフローを伴ったユーロドルの買い戻しが異常に進むこととなりました。
なんと瞬間で150pips以上買い上がるという驚愕の、ドル売り大会が行われる事になったのです。
結果「LONDON FIX」後には特段の売買ニーズもなくなり、気がつけば明け方の4時過ぎには元のレベルに戻るといった、典型的な往って来いの状況が示現することとなりました。
今回8月7日の米国の雇用統計で数字がよければ、こうしたイベントドリブン型の動きが顕在化して125円を超え、126円台まで到達する可能性もではじめてきており、十分な注意と注目が必要となります。
特に下値は先般の上海株式相場の暴落でも120円を割れなかったことから、徐々にその値を切り上げる動きとなってきております。
31日のドル売りの動きでも123円台中盤はしっかりサポートして終えていることから、上値方向に跳ねさせたい傾向が市場で多くなっている事だけは確かな状況といえます。
コモディティ価格の広範な下落もドル高の支援材料
ドル円を除けば7月後半、FOMC以降はドル高が急激に進んでいます。
しかし、ドル円だけがモラトリアム状態に陥っていることから、投機筋がこの間隙をぬって上値狙いの仕掛けをしてくる可能性は高いと言えそうです。
お盆の週になりますと、多くの輸出系企業がリーブオーダーを大量に置いて休みに入るだけに、8月7日からのほんの数日がドル円の上値狙いのチャンスともいえそうで、その動きが注目されます。
NFP(非農業部門雇用者数)に関しては既に累積的にかなりいい線を維持しているだけに、大きく数字が悪くならない限り、上方向に跳ねることを想定しておいてもよさそうです。
また反対に下落局面があれば、9月前までは絶好の買い場として機能することも考えられます。
今年の夏相場は夏枯れから夏荒れになると言った予測も出始めています。
とにかく本日のNFP(非農業部門雇用者数)には大注目です。
(この記事を書いた人:今市太郎)