1月最終週に入って米株相場では突然個人投資家とヘッジファンドが一部の低位株をめぐって仕手戦を展開するような動きが出ており、株式市場は突然異様な雰囲気に包まれはじめています。
その背景には投資オンライン掲示板レディットの株コミュニティが特定株を買い上げるように煽動していることが問題視されているのです。
これはひと昔前の米国民主党政権時代に広く市民によりウォール街叩きが起きたことを思い起こさせるような状況で、意外な材料から株式相場が危ういところに陥りそうなかなり危険な雰囲気がやってこようとしています。
ゲームストップ株が大暴騰
まず米国のゲームソフト販売大手で業績不振に悩んでいたゲームストップ株(GME)が1月後半では20ドルにも満たなかったものの、このSNSでの買い煽動の記事がでてからあれよあれよといううちに上昇することとなり瞬間465ドルを着けるまで高騰する場面がありました。
もちろん業績回復などの材料は一切ない状態での上昇ですから、異常以外の何物でもありませんが、買い向かった多くの個人投資家はロビンフッドなどの手数料無料アプリを介して買いを入れており、あまりに利用者が殺到してサーバーがダウンするといった事態も発生するほど大騒ぎになりました。
■Data Tradingview
GMEのチャートはまるで直近のビットコインの暴騰を思わせるような形になっていますが、ロビンフッドが一時売買を制限したことから暴落し、再開後にまた暴騰というなんのロジックもない洗い相場展開を継続中です。
こうした個人投資家の買い向かい集結銘柄はGMEのほかにもいくつか登場しはじめており、足元では中央銀行が長年価格操作を行ってきた銀をターゲットにして買い上げさせようとするような動きも顕在化しています。
今回の暴騰劇では単に特定株価が大幅上昇しただけならそれほど大きな問題ではなかったかもしれません。
しかし空売りをしかけていた中堅のヘッジファンドが、軒並踏みあげられてほとんど現金資金を失う形になったことから、ある種のヘッジファンドミンスキーモーメントのような状況が示現しております。
利益がのったハイテク株であるマイクロソフトなどが一斉に売られたことから、結果的に米株三指数は軒並み大幅下落するというまったく想定外の事態が相場におきはじめているのです。
こうした相場を受けて四半期決算が良好であった企業の株価も上昇することは全くなくなっており、株式市場が基本的な株価上昇の材料をまともに織り込めないきわめて不可思議な時間帯に突入してしまっています。
週明けこうした状況が一段落してくれれば、いい押し目買いのチャンスとなるのでしょうが、影響がさらに広範な株価に広がることになると、下手をすればこれが起因して大きな相場下落がやってくる危険性もあります。
過去のバブル相場にはなかった個人投資家の異常な仕手戦
今回とくに注目されるのはヘッジファンドと個人投資家の集団が仕手戦を繰り広げるような展開になっていることで、過去のバブル相場ではこうした光景を見ることがなかっただけにかなり新しく、かつ複雑な構造となっていることが危惧されます。
まるでオンラインゲームのように株価が上げ下げするような現実離れした展開はファンダメンタルズもなにもかもを無視した勝手な相場に向かおうとしている感が強く、多くの投資家が嫌気しかねないところに差し掛かっています。
当然手控えや相場からの撤退などが加速すればそれだけでも株価はさらに下落することになりますので、金融当局の規制がでることもありえそうでここからの米株状況には目が離せない時間帯です。
為替は蚊帳の外だが暴落が繰れば必ず影響を受けることに
今のところ米株の大混乱の割には為替市場は比較的穏やかな状態が継続中ですが、さらに大きな動きになれば当然影響を受けることになるのは必至でいつも以上に注意することが求められています。
リスクオフではドル買いと円買いが同時に起きて結果ドル円はドル買いが強く上昇することとなっていますが、株の大暴落では円買いが強まることもありえそうで、方向感を断定するのも禁物な状況です。
いずれにしてもかつてないような異様な雰囲気が漂いつつありますので、安易に相場に参入しないという用心深さをもって臨みたい一週間になりそうです。