日経新聞が20日、バイデン大統領誕生で菅首相が財務省幹部らにドル円100円を死守するように伝えたことが報道されました。100円を割れそうになったら介入しろという意味のようですが現状で言えば100円は実に目と鼻の先のレートとなるだけに、足元の日米関係で本当に為替介入などができるのかが大きな問題になりそうな状況です。
国内では2010年や2011年の東日本大震災後過度な円高が発生したことから為替介入に踏み切っていますが、70円台、80円台の水準の介入実績が殆どであり、100円で介入するということはここ10年の相場の動きを見るととてもではありませんが、実施して米国当局の理解を得られるようなレベルとは思えないものがあります。
何をやらせても判断が鈍り、周辺に腹心も忖度する役人もいないと評判の菅首相ですから、思い付きで財務官僚に依頼を下のかもしれませんが、果たして本当に本邦の金融当局がドル円100円を死守できるのかどいうかに当面大きな注目が集りそうな状況になってきました。
要請を受けた財務官僚もさぞかし困っていることと思いますが、これは菅政権の米国バイデン政権に対する一つの姿勢ともとられるだけになかなか難しい時間帯に入ってきてことを感じさせられます。
事前に米国にお伺いを建てるのがこれまでのやり方
これまでの日本の金融当局の為替介入に当たっては必ず米国の当局に事前通告をしてある種の許諾を求めてきたという経緯があります。
また為替介入は過度な円高を抑えるためのもので相場水準を回復させるために行うものではないというのが本邦当局の説明であったとされています。
しかし直近の相場状況を考えた時に100円割れが過度な円高なのかということになりますと必ずしもそうとは言えないものがあり、しかも足元の相場水準から考えれば100円というのは目と鼻の先にあるレベルで、口先介入やGPIFなどのPKO軍団の支援的買い支えは実現するのかもしれませんが、日銀が直接介入に乗り出すことはかなり難しい状況であることが窺われます。
果たして財務省の幹部が菅首相のこうしたオーダーに対してどのような説明をおこなったのかが非常に気になるところです。
そもそも米民主党政権は自民党とは親和性の極めて低い政党
思い起こしてみますと、今回4年ぶりに民主党政権が米国に戻ってくることになるわけですが、過去30年余りを考えてみますと、クリントン政権の誕生、またオバマ政権の誕生時には毎回ドル円は円高に動いており、しかもそのレベルはいずれも100円どころの騒ぎではなかったことが思い出されます。
もともと米国の民主党政権は日本との折り合いが非常に悪く、厳しい姿勢で乗り込んでくることが多く、直近の実質実効レートから考えれば、対円でドルがもっと安くても構わないと思っている節は強く、果たしてなんの親和性もないなかで日本がいきなり為替介入をしたときに米国の許しがえられるものなのかが非常に危惧されます。
最近ではスイスが為替操作国として認定されていますので、やり方を間違えれば日本も為替操作国として認定されかねない状況です。
さらに市場では日本の金融当局に対して挑戦的な売買をする投機筋も出現しそうで、この年末年始にさっそく100円割れを試すなどということも全くあり得なくはなくなりつつあります。
今年ももはやかなり押し詰まって為替相場には大きな動きがでる可能性はなくなってきていますが、新年早々ドル安が加速してドル円が100円方向を目指す場合には果たして本邦金融当局がそれを阻止できるのかどいうかに大きな注目が集まりそうです。
菅首相はこうした為替の複雑な背景を本当にご存じで口にされたのでしょうか。それがもっとも気になるポイントです。