米国の株式市場が大きく下げたあと連日猛烈なボラティリティを伴って上下を振幅しているのはご存知の通りの状況です。
それと並行する形で変調をきたし始めて居るのが米国の社債市場のようで、ここからの相場の推移には非常に注意が必要になってきています。米債金利が過去最低の水準になっているのになぜこうしたことが起こるのでしょうか。
リスクオフの流れで高リスク市場から資金が逃げ出し始めている
ブルームバーグの報道によりますと、社債やローン債権に投資するファンドからたったこの1週間あまりで122億ドル、日本円にして1兆2800億円程度という実に巨額の資金が引き上げられているというのです。
1週間あまりの資金の引き上げとしてはリーマンショック後の過去10年で最大の金額になっているようで、もちろんまだこれが終了したわけではありませんからさらに資金の引き上げが起きる危険性は十分にある状況です。
この報道によれば3月4日終了週の資金流出入は、高格付け債ファンドが48億ドル、ジャンク債ファンドが51億ドル、レバレッジドローン・ファンドが22億9000万ドルとなっているようです。
このコラムでもかなり以前から指摘してきたように、社債市場が大きく売り込まれると相場全体にパニック売りが加速し信用収縮から大変な暴落が来るのではないかと危惧していた状態がいよいよやってきている可能性が高まっています。
ごく近い将来に発生しそうな流動性パニック
もともと世界的な低金利時代の中で投資による一定以上のリターンが得られる社債の中のジャンク債やCLOに積極的に投資するファンドが多く、国内でも農林中金や三菱UFJ、郵貯といった大手銀行が高い格付けだけといいながらかなり積極的な投資をおこなってきたのが過去数年の特徴となってきました。
この社債市場の中でもっとも気になるのはレバレッジドローンを細かく切り分けて最組成することで格付けを高くして販売することになっているローン担保証券・通称CLOで足もとでは6600億ドルもの市場を形成するようになっているのです。
しかしこのCLO証券は変動金利タイプで市場の金利が下落すると一緒に利率が下落するというものであることから低金利時代には利益が少なくリスクだけ高い商品になってしまい、リスクオフの状況では売られやすくなってしまうのです。
本邦の金融機関はCLO市場の中でいわゆる池の中のクジラ状態を呈していますからもしこうした金融機関が売り相場を嫌気して自ら売りに回った途端にそれ自体が流動性が枯渇させパニック売りを加速し、周辺のレバレッジドローンやハイイールド債の暴落と信用収縮を一気に起こしかねない状況になってきているというわけです。
これで本邦金融機関がおかしなことになりますと、きっかけは米国社債市場でありながら相場の暴落は日本株市場がさらに先行して引き起こされるリスクがかなり高くなりそうで、また98年ごろの不穏な市場が再来しそうな雰囲気です。
米国の投資適格ファンドからの資金の逃げ出しは2019年5月以来の規模ですが、この2019年5月は投資ファンド間の資金の移動が原因であり、それを除いた場合には2015年12月以来はじめての本格的な危険な状況に陥っていることがわかります。
今回の暴落が中央銀行バブルの崩壊の引き金になるとすれば当然米国のマーケットが中心になって世界にその危機的状況が波及することが容易に想像できるわけですが、実は今回ははからずも日本がその決定的暴落の発信源になるリスクが急激に高まってきていることをしっかり把握する必要があります。それ位足元の状況は危ないものが感じられる次第です。
(この記事を書いた人:今市太郎)