金融市場は既に新型コロナの感染問題が中心的なテーマになっており、この材料を無視して先のことを考えることはできなくなってきています。
2月までほぼ横並びだった日米政府の対応、ならびに米国の都市部の対応に大きな変化が表れており、とりわけ新型ウイルスの戦場と化しているNY市の対応状況を見るにつけ、東京の状況はとりたてて稚拙であることに気づかされる状況です。
もちろん国内で暮らす人々の命と生活を守ることがもっともプライオリティの高いことがらになるのは言うまでもありませんが、どうも金融市場に関しては米株との相関性で本邦の株式相場が下落するといった3月の動きでみられたこととは異なる状況が示現するリスクがかなり高まりつつあります。
為替の領域でトレードする方々は、こうした状況をより直視する必要がでてきていると思われます。
NY市の感染把握状況はすでにメッシュレベル
少し前の2月から3月の初頭までほとんど大きな動きになっていなかった米国は、一気に感染者が広がり、とくに人種のるつぼで人の出入りの激しいNY市などは目を覆いたくなるような惨状に包まれ始めて居ます。
出典:ニューヨーク市保健精神衛生局
上のマップはNY市が公開している地域ごとの感染者数です。
検査を広範に行ったことから感染者数を減らすところにまでは至らなくても、どこに感染者がいて、どのようにシャットダウンすればさらなる感染が止められるのかについてはビッグデータの積極利用でかなりのレベルまで来ていることがわかります。
もちろんワクチンがないわけですから状況の精密な把握だけで事は済まないのも事実です。
しかしこうした現況を見るにつけ、国内、とりわけ武漢とほぼ同じ人口を誇る日本の首都東京はロックダウンを検討するにしても実態がなにも判っていないということに愕然とさせられるところ我々はたたずんでいることが良く判ります。
感染者数と分布が把握できない以上都市封鎖は機能しない
現在の東京の感染者数の増加を見ますと、恐らくそう遠くないうちに都内のロックダウンが現実のものになるであろうことは誰でも気がつくところです。
仮にロックダウンが実施されてもNY市のように細密な感染者情報を掌握していないかぎり都市機能が闇雲に麻痺するだけで、感染の収束にはまったく至らない可能性が強く危惧されるところです。
こうした新型ウイルスに関して最悪の状況を考えるというのはなんとも気が引けるところではありますが、このままでは東京、日本が世界的な新型ウイルス敗戦国になりかねないものがあります。
当然のことながら金融市場も日本だけ独自の下落の動きを示現することを相当心配しなくてはならなくなっています。
相場のさらなる下落を余儀なくされる状況に
既にこのコラムでは株式市場はまだ一番底にはなっていないのではないかという疑問を投げかけています。
実際朝鮮戦争以降米国の市場でリセッションから株価が大きく下げた相場は、15回ほどあり、しかもその平均は29%の下落となっているそうです。
3月の暴落は金額こそ大きなものでしたが、暴落率ベースでみれば史上空前の暴落にはなっていないことが良く判ります。
非常に残念なことではありますが、新型コロナ起因といえども日本が他国にないような感染状態に陥り、しかもロックダウンによってほとんど首都機能が壊滅的に停止した場合、GDPの減少はさらに大きなものになります。
日経平均が主体でここから4割程度、つまり1万1000円レベルまでの暴落に見舞われるリスクは3月段階よりも飛躍的に高まっている印象を受けます。
この場合ドル円が果たして単純にリスクオフから円高になるかどうかも怪しくなってきていますが、一旦リスク回避から円高に再シフトが起きた場合にはまたしても100円方向への動きを考える必要がありそうで、4月相場は相当神経戦になりそうです。
これをお読みの個人投資家の方は3月以上に足元の相場での取引を注意されることをお勧めします。
(この記事を書いた人:今市太郎)