世界中の中央銀行が新型コロナ対策で未曽有の金融緩和措置を打ち出してきていることもあり、株式相場は驚くほどの値戻しを継続中です。
Data Howmuch.net
上のHowmuch.netのデータを見ていますと、日本はそれほどではありませんが、
とにかくこの新型コロナウイルス感染に伴って猛烈な勢い主要国が足並みをそろえて緩和措置に走っているわけです。
新型コロナの感染拡大のリスクを除けば、人類が経験したことのないような金融緩和状態が展開しており、当然それなりの資金が株式市場になだれ込む形になってきていることがわかります。
しかし実態経済はここから本格的に悪化の一途をたどろうとしているわけで、多くの企業収益はまさにここからリセッションに向けて悪化の一途に向かっているのですから、足元の相場の雰囲気は違和感たっぷりの状況といえます。
トランプの経済再開宣言に期待か
米国のトランプ大統領は5月初旬にも経済再開を宣言して11月の大統領選挙に向けて弾みをつけたい模様ですが、新型コロナの感染者数の推移は上がったり下がったりを繰り返すことで、一定期間を置かないと本当に収束とは言えない可能性が高いです。
迂闊に前倒しで収束を思わせるような宣言を出してしまった場合、経済のみならず社会生活に与えるネガティブな影響ははかりしれないことから、下手をすれば大失敗につながる可能性もありかなり心配な状況です。
どうも米国ではこの新型ウイルスさえも政治の道具としていじくりまわされている気配濃厚で、何もしないのに対応は万全と胸を張る安倍首相とは別の意味でトランプの存在はかなり危ういものになろうとしています。
米国のメディアはトランプの新型ウイルスの会見は単なる大統領選挙のプロモーションに過ぎないということで生放送を行わないところも出始めていますが、本邦の首相の不可思議な動画とは別に政治利用が過度に進んでいることが窺える状況です。
楽観論が先行して頭をもたげてくるのはよくわかりますが、この状況では過去数年米株市場に大きな影響を及ぼしてきた米国企業の自社株買いなどもここから大量に登場するとは全く思えないものがあり、過剰な楽観論には相当な違和感を覚える次第です。
為替は株式市場よりも現実的
株式市場は短期の新型コロナの感染が比較的短期に収束するという見方を強めているわけですが、為替市場の対応はむしろより現実的なものになっており、FRBの猛烈な金融緩和はやはりドル安方向に動き始めていることがわかります。
ドル円の場合危機対応のドル需要は完全に落ち着いていますから、再度米株相場の暴落でもないかぎり大きく上昇する可能性はかなり低くなりつつあります。
OPECプラスでの減産合意がはかられた原油先物は案の定下落をはじめており、再度20ドルを割る動きになってきています。
どうやら金融市場では中央銀行の緩和を後ろ盾にした楽観的な相場の買いと相当な現実論とが並行しはじめているようで、どちらが結果的に正しかったのかはこれからの相場を見ていれば判ることになりそうです。
いずれにしても株の楽観的値上がりはとにかく違和感たっぷりであり、相場がそう動くのですから文句を言っても仕方ないのですが、どうして人が裁量取引で感じるリスクとAI、アルゴ主導、かつ短期の投機筋がかき回す市場との間にこれだけの感覚的ギャップが生まれるのか非常に不思議な気分になるのは事実です。
相場の状況がよくわからなくなると様々な専門家の声を聴きたくなりますが、個人的視点で見た場合、とても役に立つことを言うアナリストやエコノミストは非常に少ないのが実情で、手に入る材料で自ら判断することがもっとも重要であると思われます。
(この記事を書いた人:今市太郎)