ERMとは、European Exchange Rate Mechanismの略号のことで、日本語では欧州為替相場メカニズムと訳されています。
EUが依然ECと呼ばれていたころにユーロ導入前段階で加盟国が利用していた核通貨が一定の範囲内で変動する為替相場機構のことをいいます。
当時は大幅な為替変動を避けるため、当初はプラスマイナス2.25%の中に収まるように調整がとられていましたが、93年の欧州通貨危機の際にはプラスマイナス15%までの変動まで認められるようになっています。
イギリスも1990年にこのERMへの加入を果たしますが、その直後の通貨危機で通貨の大暴落に見舞われることとなり、かのジョージソロスとイングランド銀行の為替対決の構造を作り出したものの、ジョージソロスの大量資金による売り浴びせがなんと中央銀行に勝利する形となり巨万の利益がソロスにもたらされ、結果としてイギリスはこのERMを脱退せざるを得なくなり、いまだにユーロの利用国にならずに今日に至っています。
ユーロ導入後はこの組織はERMⅡと名称を変更し、新たにEUへ加入しユーロを導入しようとする国の為替相場メカニズムのクッション的役割を担うようになっています。
ユーロの導入は当初のERMのような為替調節機能を必要としなくなりましたが、複数の個別国家財政を運営する20カ国以上もの国が共通通貨を使うことの難しさを露呈する結果となっており、ユーロ圏は新たな問題を抱える結果となっているのです。