内部留保とは、一般的には企業が獲得した利益から税金や配当金、役員報酬などを引いた残りで、利益準備金や繰越利益剰余金などの項目で貸借対照表の純資産に組み入れられるもののことをいいます。
ただ、株式会社を運営してみるとよくわかりますが、中小企業の場合には帳簿上では黒字になっても企業の預金上はその額がちっともたまらないということはよくある話です。
企業決算というのは法的に決められた仕組みで、残るお金とそれ以上に残るお金が存在し、企業が抱える現預金は帳簿上では把握せきないものも多数存在することがわかります。
バブル期のヘリコプター
たとえば、バブル期にはヘリコプターを購入する企業が増えた時期がありましたが、これは耐用年数が2年、つまりたった2年で1億以上の商品が減価償却してしまいますので、3年目からは保有していても帳簿にはヘリコプターは存在しないことになります。
するとこうした商品を売却した利益は貸借対照表上のどこにも出てこないにも係らず、現預金として保有されているという実に不思議な状況が現実のものとなるのです。
こうしたやり方は実に古典的な節税方法ですが、それ以外にも様々な方法が企業の内部留保を高めるために使われているのが実態となります。
使途不明金の原資になる?
このように節税や税制上大手の企業などに与えられた特典を利用することで「内部留保」は帳簿上に現れない保有資金として、想像以上に溜まりやすいものといえるのです。
もちろん帳簿上で視認できる内部留保もありますが、製造業系の輸出メーカーなどはこうした内部留保が溜まり易い存在とも言われ、業界によってその状況は様々に異なるものとなっています。
中でも帳簿上で視認できない内部留保は企業内で保有されていることが外から認識されないため、どのように使われているのかは判別しにくいものもあり、使途不明金の原資になることもあるのです。ひとくちに内部留保といってもかなり奥の深いものがあります。
従業員の報酬UPにはなかなか繋がらない
もともと資金力があり、日常的に資金の出し入れが多く、様々な節税や税制上の特典を利用できる大企業はやはり内部留保を溜めやすい存在になり、中小の零細企業とは大きくその状況が異なることがわかります。
またこうして溜め込まれた莫大な内部留保は大手企業の場合何に使われているのかよくわからないままに消えていく部分もあり、とくに節税により手にすることになった現金についてはある種きわめて合法的な使途不明金となっているケースも多いのが実情となっているのです。
しかし一般的にはこうした資金が従業員の報酬を増やすことには使われておらず、多くの企業が使わないまま溜め込んでいるのが現状です。