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カーニー総裁と狼少年どちらが信用できる?

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ここ2年以上ポンドを売買しているトレーダーは「またかよ?」と思われることでしょう。
2014年サッカーワールドカップの第一試合が始まった6月、突如としてカーニー総裁が利上げを示唆したのは記憶に新しいところです。
その後、イギリスはそれどころではなくなり、スコットランドの離脱をめぐる国民投票などもあって、BOE初の利上げは立ち消えとなっていました。
それが、またしてもカーニー総裁の口から早期利上げが出ることになり、現在の相場ではその影響を受ける形で、ポンドは上昇することとなっていますが、今回は本当に信用できるのか?
これまでに、ポンドで一杯食わされたトレーダーにとっては・・俄かに信用できない状況といえます。
公的な機関の責任者の中でも、各国の中央銀行の総裁は政策決定とその遂行の為、市場に対して欺瞞が許される存在とされています。
しかし、中央銀行総裁発言をあてにして為替の売買をするものにとってみれば、とんでもない存在であり、一旦欺瞞が露見すれば簡単に信用してついてはいけない状況です。
果たして・・今回 「イギリスの利上げ」 は本当に実現可能性があるのか?本日の記事で検証していきたいと思います。

そもそもマーク・カーニーとは

「マーク・カーニーBOE総裁」が大きな注目を集める存在なのは、彼がイギリス人ではなく、英連邦のカナダ人であることです。
1965年生まれのカーニーは現在49歳。ハーバード大学卒業後に、オックスフォード大学にて1995年に博士号を取得し、その後はゴールドマンサックス(GS)に勤務し、日本にも在住していた事があります。
Photo:WSJ
GSの出身となると「ECBのドラギ総裁」や「前FRB議長のバーナンキ」が思い出されます。
最近話題の「MIT学派」とは一線を隔す存在といえます。2008年にはカナダ銀行総裁に任命され、さらに2013年7月からはBOEの総裁に就任して現在に至っています。
BOE総裁就任当時は市場も安定し、かなり優秀な存在と評価されましたが、2014年あたりからの・・・「猫の目のように変わる発言」以降は、大した人物ではないのでは?という揶揄の声も聞かれるようになり、その存在はなかなか微妙です。
特にその発言に対する信憑性が、マーケットでは大きく問われるようになっているのです。

イギリスは利上げの要件に至る存在なのか?

まず、イギリスのCPIの推移を見てみますと「リーマンショック」以降は、一貫して比較的高く推移してきましたが、2014年後半からはその水準が下がりはじめ、2015年に入ってからは1%台に乗らないレベルで推移しつつありあます。
また4月以降は0%の月やマイナスに転じる月もあり、デフレとは言えないまでも、これまでに比べれば落ち着いた傾向があります。

GDPベースでの成長率は高い推移

■名目GDPの推移
イギリスのGDPはドイツには及ばないものの、2014年にはフランスを抜いて「世界第5位」の座をキープする存在となっています。
注目されるのはその成長率で、同じ欧州の中に位置していながら他の国を大きく引き離す成長率を、ここ2年近く継続してきているところが注目されます。
■UK GDP成長率(四半期ベース)

民間の賃金上昇率は上昇しているが、それ以外のセクターがついてこない

イギリスでは、ここ1~2年の住宅市場の反発による「資産効果」が個人消費を押し上げているとも言われ、欧州圏内ではドイツに次いで堅調な景気回復が継続していることが、利上げを後押しする状況となっているのです。
特に最近注目されているのが「民間部門の賃金上昇率」で最新の統計では年間4%近くにも達する勢いであるのに対し「公的部門では1%に及ばない」上昇で、低所得者層との乖離も進んでいることから、これで本当に利上げできるのか?という点が注目される状況となっています。

8月MPCでは利上げに投票する委員も示現

最新のメディア報道では8月のMPC(政策決定会合)で利上げに投票する委員も登場するという見通しが出始めており、年内に本当に利上げが実現する可能性も否定できない状況が近づいていることは間違いありません。
ただし、米国の利上げが後ずされ始めている中にあって、BOEだけが先行して利上げに踏み切るのかどうかは・・依然不透明感が残されていることも事実です。

ポンド円は過去5年では最も高いレベルで推移

気になるのは為替の推移ですが、ポンド円は過去10年でいいますと2008年のリーマンショック前に近い水準に向けて上昇を続けております。(2015年7月21日現在のポンド円:192.10円)
利上げが現実のものとなれば、このライン前まで戻す事も全くない話ではありません。 
※ポンド円月足チャート
月足で見ますと、ポンドは一貫して上がってきているようにも見えますが、その振幅はかなり大きなものがあります。とりわけ架空通貨でほとんど実需のニーズがない「ポンド円」は、大きく上げた後に、必ず尻もちをつくように下げる。という独特の習性をもっているのです。
したがって、長くポジションをキープして更なる上昇を見込み、期待すると大きくやられるのがこの通貨ペアの特徴でもありますから、上がっているといっても十分な用心が必要になってきます。

現在の相場であればデイトレがおすすめ

為替のプロトレーダーであっても、リーマンショックで痛い目をみた経験からポンド円は取り扱わないという人も多くなっています。
一つの考え方としては、トレンドが出始めて、順張りで一定以上のPIPSがとれた時には・・あまり欲張らずに必ず利益確定をすることを心がけることでしょう。
欲張ってスイングトレードを仕込むよりも、確実に毎日利益を出すデイトレに留めておくのも、リスクの上手な取り方といえます。
BOE総裁である、カーニー発言に乗るならば噂のレベルはしっかりついていき、利が乗ったら一旦利食いをし、また動きが出る度についていく、こまめな対応が痛手を被らない方法なのかもしれません。
利上げに向けてじっくりポジションを持つならば、大きく下げた押し目を拾う事しかありませんが、ポンドに関しては下落の局面で反対売買をするのもなかなか気の引ける通貨です。
個人投資家にとってはポンド円は想像以上に難しい通貨であり、コントラストの明快さからいうならば、「ユーロポンド」で売買するというのも、一つの現実的な考え方になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎
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