3月の第1四半期予想数値がほぼ的中で話題に
アトランタ連銀の発表する「GDP NOW」が話題となり始めたのは今年のはじめですが、とくに注目されたのは3月17日時点で米国の「GDP」成長率を+0.3%としていたのに対し、同月の29日に発表された「GDP」成長率が+0.2%でほとんど誤差なく的中させた辺りからでした。
大方のエコノミストが1%などと大外れをした時にこのアトランタ連銀だけが正確に予想していたことから、次回の「
GDP」についてもこの「GDP NOW」の予想が注目されているのです。
GDP NOWは週一回の更新
この指標が実に役に立つのは、ほぼ「週1回」公表される点です。「雇用統計」は皆さんご存知のとおり月初に1回しか出ないため、経済実態の把握指標として不十分です。
しかし、米国経済の状況をリアルタイムで示す「GDP NOW」は、その欠陥を補うところがあるため、業界内でも非常に注目が集まっているというわけです。
しかも民間の指標ではなくアトランタ連銀という、「FRB」に大きな影響力をもつ地区連銀が発表しているところも大きなポイントとなっています。
「
GDP」は成長率を知る上でもちろん有益な指標ですが、いかんせん「公表が遅い」という問題があります。例えば、2015年1-3月期の「
GDP(速報値)」の公表は4月29日です。
一方、GDP NOWは「
GDP」の予測に関連する「経済指標」である
「ISM製造業景況指数」「国際貿易統計」「小売売上高」「住宅着工件数」「耐久消費財」「個人所得・支出」の6種類のデータが公表される度に、新たな「
GDP推定値」を発表する点が優れているといえるのです。
8月13日のGDP推定値に大注目
来月の8月13日には7月分の「雇用統計」が反映された「GDP NOW」による第3四半期「GDP推定値」が発表されますが、「FOMC」メンバーの経済見通し(SEP)に提示されている長期的成長率は平均で2.15%であり、これを超えた数字が登場するかどうかに注目が集まります。
直近では2.4%となっていますからこのままいけば超える可能性は十分にあり、まだまだ9月利上げの可能性も残されることになるわけです。
アトランタ連銀ロックハート総裁は典型的なハト派
もともとアトランタ連銀の「ロックハート総裁」は「ハト派」で知られる人物ですが、こうしたGDP NOWの数値が強気に推移すれば9月利上げを容認する可能性もあり、このあたりの数値が今後の利上げ時期を占う大きな材料になりそうです。
重要「経済指標」の発表でその状況が改善されることになれば、早期の利上げの可能性が浮上することになるためドル円は当面買われることになりますし、強いドルがこの夏継続することも考えられるというわけです。
「イエレン議長」は7月10日の議会での発言で、
「フェデラルファンド(FF)金利誘導目標引き上げへ最初の一歩を踏み出し、金融政策の正常化を始めるのが年内のいつかの時点で適切になるだろうと考える」
「しかしながら強調しておきたいのは、経済と「インフレ」がたどる道筋は依然としてかなり不透明であり、想定外の展開によっては最初の一歩を先送り、あるいは 早めることもあり得るということだ」
と発言して、今後も「経済指標」を見ながら利上げ時期を判断したいとしています。
今年はジャクソンホールで講演をしないイエレン議長
例年8月後半にワイオミング州ジャクソンホールで開催される経済シンポジウムが夏の後半のイベントとしては注目されています。
これはカンザスシティ連銀が主催し、世界各国から「中央銀行」総裁や政治家、エコノミストなどが参加することで有名なものとなっていますが、その中でも例年「FRB議長」の講演に注目が集まります。
しかし今回「イエレン議長」は、この会議に出席しない意向を発表しており、9月の利上げの可否について事前にその状況をこの会議の講演から探ることはできなくなっているのです。
こうしたことからもアトランタ連銀の「GDP NOW」による前倒しの「
GDP」予測が重要なポイントとなってきているというわけです。
利上げ予測の高まりは一気に市場の動きを加速か
この3月から米国の利上げ時期を巡っては、その思惑から「株式」、「債券」、「為替」の各市場がそれぞれの動きを強めていますが、確実に9月利上げとなればこの3つの市場が大きく動き始めることは間違いありません。特に「株式」と「債券」については、大きな動きとなることが予想されています。
為替でいえばドル円は上昇基調となることは間違いなく、トレーダーとしては少しでもその兆候を早く掴みたいところです。
そういった意味で、8月13日の「GDP NOW」の数値予想がそれを占う重要な予想のひとつとなりそうです。GDP NOWの数値については今後も注目し、記事にしていきます。