中国人民銀行が立て続けに行った「人民元の切り下げ」は初期段階からかなり大げさな反応を市場が示すこととなりました。
市場の狼狽ぶりが見え隠れすることとなりましたが、合計4.6%の切り下げで一旦落ち着くことになるのかどうかはまだまだ分らないのが実情で、本格的な異変や急変を繰り返す可能性もかなり高くなっているといえます。
今回の切り下げはSDR狙いだけが目的なのか?
中国の今回の狙いは「SDRへの人民元採用への布石である」とする報道はかなり多くなっています。
SDRとはSpecial Drawing Rightsの略号で、IMFへの出資額に応じて、加盟各国に割り当てられる準備資産を示します。
急激な資本流出などで万が一資金が足らなくなった加盟国は、SDRと交換することで他の加盟国から広く世界で流通する通貨を融通してもらえるのが大きなメリットとなります。
IMFが1969年から開始している仕組みで5年に一度見直しが行われております。
現在の構成通貨は「ドル・ユーロ・ポンド・円」の4通貨となっています。
ここに人民元が加われば、新興国通貨としては、初めての採用となるので中国はこれに躍起になり始めているという見方が強いのです。しかし中国の人民元の実効レートをみていくと必ずしもそれだけではない事情が見えてくることになります。
実行レートでみると確かに人民元は非常に高い存在
BISが発表している主要国の実効レート比較でみますと、各国が自国通貨を切り下げたおかげで実は、「人民元」が非常に高い位置にあることがわかります。
特に日本円がアベノミクスの金融抑圧以降大きく切り下げに成功しているのと逆相関の形で「中国元」は大きく切り上がってしまっていることがよく分ります。米国の利上げの前に少しでも調整して、輸出を圧迫する状況を改善したいと思うのもある意味当然ということができます。
中国人の爆買いは単なる富裕層の可処分所得増加だけが原因ではない状況
「中国人民元が割安」とのイメージをもつ人も多いことと思いますが、すでにそれは過去の話であり、実態はかなり割高である事から金融当局も切り下げせざるを得なかったというのが実情のようです。
最近の 中国人観光客の「爆買い現象」が中国人民元の割高を示唆するものといえるのです。
日本ではもっぱら中国人富裕層の可処分所得の話が前にでてきますが、実態は中国元高から日本円と日本の消費に割安感がある為だということが分ってきています。
バロンズ誌は人民元10%以上の下落余地を示唆
最新のバロンズ誌は「China’s Yuan Could Fall 10% or More」と言う見出しで人民元は今回のレベルにとどまらず10%以上の下落余地があることを指摘しています。
中国の衝撃的な人民元切り下げは、輸出の大幅減による著しい景気鈍化の兆しが現れた後に行われたものであり、この間の利下げを始めとした一連の政策でも景気鈍化を食い止めることができず、中国株安の激震の後の政策として打ち出されたものです。
微小な切り下げで終わるかどうか分らないというのは、おそらく事実であろうと思いますし、更なる切り下げを想定しておいても悪いことはない状況です。
9月中国は政治的人事の季節
9月には中国の「習近平国家主席」初の公式訪米を行うことも決まっていますが、さらに9月は中国指導部の人事による入れ替えの季節であることから、新たな取り組みや、これまでにない動きもさらに出現する可能性が高い時期となっています。
本来「人民元の切り下げ」も習近平訪米に絡んで行われるのではないか?と見ていた事情通が多かったようですが、あらゆることが前倒しに動き始めている可能性も高く、まだまだ安心できる状況ではないのです。
すでに中国のQEは始まっているという見方も
中国人民銀行は金融機関に対して地方債の購入を通じて資金を供給しはじめており、その資金で政府系のファンドが株価PKOに動いて前回の大幅株価下落を支え始めているといわれます。
これは明らかに日本的なQEとPKOの動きであり、成果がでなければさらなるアクティビティが登場しても不思議はない状況となってきているのです。米国の株価が下落、低迷しそうな9月相場にはさらなる動きが加速する可能性も十分に考えられる今日このごろです。