そもそも9月はNYダウがもっとも下落するタイミング
例年9月というのはNYダウが下落するタイミングになっているのに加え、今年は利上げを織り込みに行こうとしているので、更に大きな下押しが示現する可能性が高まっています。
日経平均自体は過去の動きから考えますと、8月のほうが9月よりも下落トレンドがはっきりしていますが、今年の場合どこまで米国の相場に影響を受けることになるのかが注目される事となります。
ドル円はNY株価よりも国債の金利に連動するようになってきてはいますが、日経平均の下落には敏感ですから株価の動きには注意が必要となります。
※8/21(金)の日経平均株価及びダウの下落は明日の記事に書きます。
コモディティ価格下落に起因するクロス円通貨の下落がドル円の重石の可能性
8月から続くコモディティ価格の下落は、資源国通貨や新興国通貨に大きな影響を与えていますが、ドル円の場合には他のドルストレートと違って、クロス円がその上昇の頭を押さえていく可能性が高くなってきています。
原油価格の下落継続と原発再稼動は明らかな円高要因
イランの核合意以降イラン原油が市場に再参入することから、原油価格はまた下落を始めています。
国内では、原油価格の下げが日銀の物価目標到達を大きく妨げる原因となっていますが、それだけではなく2013年には年間13兆円あった貿易赤字の解消に大きく寄与するようになっているのです。
加えて国内で凍結されてきた原発の再稼動が進めば、さらに貿易赤字は解消することとなり、結果として実需面での円安要因がひとつ消滅することとなります。これはボディーブローのように市場に効いてきますので、円高方向に進路が変わる可能性も出てきているといえます。
安保法案通過と内閣支持率向上を狙った補正予算の実施も円高ファクター
安保法案の国会通貨と来年の参議院選挙を見越した内閣支持率の再浮上を狙って、現内閣は補正予算、つまり地方をターゲットにしたばら撒き予算の策定実施を検討中のようですが、この補正予算の実施というのは、金融政策をスポイルするものとして働く可能性が高く、多きな円高要因となりそうです。
これは「マンデル・フレミングの法則」と呼ばれるノーベル賞受賞の法則に基づくものですが、財政赤字が拡大すると実質長期金利が上昇し、設備投資や住宅投資が減少する(クラウディング・アウト効果)となります。
実質長期金利が上昇すれば当然円高に振れることとなり、そのまま円高がすぐに示現しないとしても、少なくとも日銀が推し進めているQEとの相殺勘定になることは想定が必要となります。
そもそも米国の利上げ後ドル高円安になるのかという根本問題も
2004年FRBグリーンスパン議長のもとで行われた利上げでは確かにその後ドル円は一旦上昇することとなりましたが、今回利上げをした場合本当にそれをトレースした動きになるのかという疑問も生じ始めています。
今回の利上げの場合長く続けて来た「QE」のおかげで市場には資金があふれ返っている状況であることが2004年の環境とは大きく異なる部分となっています。
確かに対新興国通貨、資源通貨ではドル高が大幅進行する可能性がありますが、この場合対円でも新興国通貨や資源通貨は大幅下落することから、ドル円ベースで見た場合にドル円も上昇するのかどうかが大きな問題となってきそうです。
逆に一旦「うわさで買って」事実売りが進めばドル円は売られることも考えられます。
大統領選挙の本格化で政治的にドル高にけん制発言が頻発する時期
さらに9月以降は2016年の米国大統領選挙の準備運動がいよいよ本格化することになり、市場への影響を勘案して民主党、共和党ともにドル高をけん制する発言をしてくる事が容易に考えられます。
その中でも最も先進国で叩きやすい日本円がターゲットになることもしばしばで、秋口以降円安にけん制が入る可能性が高くなっているといえます。
問題はそれまでにドル円のレートがどのあたりにあるかで、押し目の作られ方も変わってくることになりそうです。このように冷静に見て行きますと「ドル円は単に米国の利上げで上昇局面に乗り130円方向に年末まで上昇するようには見えない」のが実情となっています。
官製相場が続いてからは値幅調整がなくなり、もっぱら日柄調整で凌ぐようになっているドル円ですが、この秋口は一旦下落方向についても想定しておいて良さそうな状況となってきています。
うまく底値を拾えれば絶好の買い場に遭遇することもできそうです。