国際通貨として採用されることがそんなに大きなメリットになるのか?と思われる方も多いかと思いますが、実は中国にとってはこれが大変重要な問題になりつつあるのです。
引用元:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151026-00050067-yom-bus_all
そもそもSDRとは?
この「SDR」というのはなかなかややこしい定義になりますが、もともとは国際流動性の不足に対応するため、金、ドルなどの準備資産を補完する目的で1969年の「IMF」協定改正により創出されました。
すべてを金と米ドルで間に合わせるのは大変だということで、こうした流れになっていったことが窺われます。「SDR」は出資額に応じて加盟国に配分され、その価値は当初は金を基準としていました。
しかし、1974年からは主要16カ国の通貨の加重平均によるバスケット方式に改められ1999年1月のユーロ誕生以降は、独マルクと仏フランはユーロに収束されています。
ドル外貨準備の急減で民間の外貨調達への支援余力大幅減退
これまで中国国内の企業は国の後ろ盾があったため外貨の調達が非常に楽な時期を過ごしてきたわけですが、最近の中国人民銀行の動きを見ていますと米国債もかなり手放しているようですし、日本円にして300兆円程度の資金を一体何で保有しているのかも不明であり、外貨準備を後ろ盾にした国際信用力は想像以上に下落していることがわかります。
民間企業に対しては自助努力で外貨調達を促していくことになるのだろうということは容易に想像がつく状況ですが、ここに「SDR」が効果を発揮していくことになるわけです。
つまり「SDR」採用通貨になれば、今後は外貨を調達しなくても「人民元」のまま取引ができるようになれば、民間企業の輸出にはかなり貢献することができるようになることから、中国はことさら熱心に「IMF」に働きかけを行っているといわれてきています。
AIIBもSDRも中国の資金調達と外貨不足が原因とみればわかりやすい
以前このコラムで中国の外貨準備は、実際いくらあるのかということについて触れています。
実は400億ドル以上あるといわれている同国の外貨準備が張子の虎で、様々な理由からかなり枯渇しているのが実情であるとすると、中国が外貨調達手段となるAIIB(アジア投資銀行)をむりやり設立し、米ドルを使う必要が無い「人民元」での貿易決済を進めるとともに「人民元」の「SDR採用」にこだわるという目的は、なんのことはない資金調達・外貨不足という話と整合性をもってくることになるわけです。
中国は他の新興国と同様、ここへ来てドル建て債務が膨張しています。
国際決済銀行(BIS)は9月13日に発表した四半期報告で、「中国の成長減速とドル高は新興国に二重の難題を突きつけている。それはコモディティー輸出業者を始めとする成長見通しの悪化と、自国通貨建てで見たドル建て債務の増加だ。」と警告していますが、当の中国自身もこのことに苦しんでいることが窺われます。
また、そのほかにもいくつもの不可解な動きがでています。8月にはいきなり「人民元」の切り下げをしていますし、いまやインバウンド消費でも有名で日本国内でも加盟店が増えているといわれる銀聯カードの域外現金引出に年間10万元(約188万円)の上限を導入しています。
為替操作国と誹謗する米国の長年の圧力にも拘わらず「人民元」の管理相場を続けている状況も、外貨不足が原因という下敷きをもってみると、すべてつじつまの合う話に見えてるのです。
しかも8月26日に行った利下げを10月23日にまたしても実施したあたりは、単なる「金融緩和」として喜ぶべき状況ではなく、実は相当困っている可能性もあるといえるのです。
市場は中国の緩和措置を歓迎していますが、長期的に見た場合、実は喜ぶべき状況ではなく、いきなりリスクオフが到来する可能性もあるのです。
(この記事を書いた人:今市太郎)