10月も利上げの無かった米国「FOMC」のおかげで市場はすっかり12月利上げ期待に動いているよう見えますが、仮に12月に0.25%ないし0.125%の利上げが行われた場合、その後の相場は一体どういうことになるのでしょうか?
ほとんどの市場参加者が利上げの瞬間についてだけの期待で相場を想定していますが、当然来年も為替相場は粛々と続くわけでその先が一体どうなるのか?そろそろ次のことも考えておかなくてはならない時期にさしかかってきています。
しかし、どうもドル円をとりまく経済環境は少しずつ変化しているようで、たとえ年末までドル高円安方向に動いてもその先が同じベクトルかどうかはかなり怪しくなりはじめているのです。今回はそのことについてまとめてみたいと思います。
貿易赤字の大幅減少がドル円の方向性を変える可能性
東日本大震災以降、国内では多くの石油や天然ガスをはじめとする燃料輸入が増え、結果として貿易赤字は年間で13兆円を超える赤字になりました。
燃料の量自体はそれほど爆発的に多く輸入されたというわけでもないのですが、この間「原油価格」も日本が買い入れてきた天然ガスの価格も馬鹿高くなったことが大きく影響したことは間違いありません。
ところがここへ来て、日本の「経常収支」は急激に改善しています。 最新の政府が発表している速報数字では「経常収支」の8月黒字額は前年同月比6.6倍の1兆6531億円で経常黒字自体はなんと14ヶ月連続の状態で、黒字幅押し上げる勢いとなっているのです。
「貿易赤字」は依然として3261億円ありますが、大幅赤字からはかなり状況が変化していることがわかります。2013年ほぼ「ヘッジファンド」が国内株式のために投入した資金は15兆円でしたが、それと同額のドル円をヘッジで買っていたことが確認されています。
当時の「貿易赤字」はそれ匹敵する金額であり、実需として外貨を支払うためにドル円を購入せざるをえないお金が年間13兆円あったわけですから、少なからずドル円を押し上げる円安効果を発揮していたことは間違いありません。
しかしここへきてこうした援軍がすでになくなってきていることをこの数字は示唆しているのです。
「GPIF」そのほかの年金軍団のポートフォーリオのリバランスも一旦は終了しているものと思われますから、いわゆる官製軍団でドル円の下値を支える組織がかなり減少し、さらにこの実需のドル買い円売り大幅減少が示現しつつあるというわけです。
ECBによるユーロ圏のマイナス金利幅増大による追加緩和も円高要因へ
さらにもうひとつドル円に大きな影響を与える事態が起こりそうです。
それが「ECB」によるさらなるマイナス金利の進行ということです。実際「ドラギ総裁」が本当に12月にこの手の追加緩和を本当にやるのかどうかはまだよくわかりませんが、やるといったら本当にやるのが「ドラギ総裁」の手法ですのでなにかが飛び出す可能性が十分に考えられます。
このユーロ圏金利低下は、これまでゼロ金利で円が「キャリートレード」の対象となってきましたが、このユーロの更なるマイナス金利化はこの「キャリートレード」を円からユーロに移行させる可能性があり、これまでのように円売りにはならなくなる可能性も高まってきているのです。
こうした動きは年内には大きな動きにはならないと考えられますが、年明けからはこうした動きが本格的にドル円に影響を与えている可能性も考えておかなくてはならなさそうです。特に12月に米国の利上げが行われれば一旦材料で尽くしになりますから下押しになるケースも十分考えられます。
ドル円年間20円幅から考えれば下値は100円台初頭もありか?
果たしてこうした材料がでてきたときにドル円はどこまで下押すことになるのかですが、今年は驚くほど動かない年でしたが、例年ですと20円は上下する可能性がありますから、120円から考えれば最大100円に近いところまで下げる可能性もでてくることになります。
また120円を中心に考えれば下は110円、上は130円と考えることもできます。ちなみにこうしたファンダメンタルズの要因をまったく別にして「エリオット波動の専門家である宮田氏」は年明け5月に向けて106円方向を示唆していますから、はからずも下押しに対して整合性がではじめてきています。
果たしてこうした要因が本当に円高方向に組み込まれていくことになるのかどうかが注目されそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)