「IMF」は30日に開催した理事会で、特別引き出し権(SDR)構成通貨に「中国人民元」を加えることを正式に承認しています。今回の通貨追加は、35年ぶりの大規模な構成変更となり、人民元のSDR通貨バスケット比率は10.92%と、事前予想並みの水準となっています。
「IMF」が2010年に設定した、直近の比率は、ドルが41.9%、ユーロは37.4%、英ポンドが11.3%、円が9.4%となっていましたが新たな比率は、ユーロが30.93%に低下するほか、英ポンドや円も下がる見通しです。
実力よりも高く維持されすぎの人民元
「中国人民元」は対ドルとの管理通貨になってきたため、この5年あまりで40%近くも割高な水準をキープすることになりました。
果たして来年の10月まで国の威信をかけて「人民元」のレートを守り抜くのかどうかが極めて注目される部分になりそうです。
あっさり切り下げ実施の可能性も
気になるのはまたしても突然の「人民元の切り下げ」措置が実際される可能性です。今年の夏突然の切り下げを行ったことで市場はリスクオフの状況となり、円も大きく下げましたがユーロも大きく下げることになったのは記憶に新しいところです。
米国が利上げした直後であればこうした動きに中国がでるのはそれほど不思議なことではなく、可能性が高まっているとの見方もではじめているのです。大きなリスクとなるのは年内に突発的に切り下げが行われるようになった場合です。
一般的にはやるとしても年明けの実施ではないかとされていますが、年末までに切り下げが突然行われることになれば、「ECB」の利下げにさらに輪をかけた動きとなることは間違いなく、円高にユーロ安が重なり為替相場はかなりの大荒れになることが予想されます。
とくに欧米の「クリスマス休暇」シーズンで流動性の低いときにこうした動きが出た場合、過度に円高に戻されたり、ユーロの下落が加速することが考えられるため注意が必要となります。
この場合、もっとも影響が大きいと思われるのはユーロ円で、想定以上に下落することも覚悟をしておく必要がありそうです。全般的にクロス円での円高も間違いなく示現することになると思われますので、こちらも注意すべきです。
いつやるかわからないのがPBOC
前回の「人民元の切り下げ」もほとんどノーマークの状況下で突然実施されたわけですが、今回も同様に行われますと、かなりインパクトの大きな政策決定となるのは間違いない状況です。
とくに「PBOC」の場合には土曜日や日曜日などの休みの間でも平気でこうした発表をすることがあるため、迂闊にポジションを週またぎで保有していた場合、ストップもうまくつかずに大きく損失がでることも考えられるため、非常にリスクが大きくなります。
こればかりはいくら心配してみてもどうにもならないものですが、「FOMC」以降は利益の乗っているポジションはできるだけこまめに利確して、闇雲に長く持たないようにするといった工夫が必要になりそうです。また中国にとっては日本の正月時期はなんの関係もありませんから年明け早々に切り下げを打ち出してくることも考えられます。
(この記事を書いた人:今市太郎)