「WTI原油先物」もこうした流れを受けて、久々に31ドルまで回復し、原油市場にも一服感がでてきていますが、そんな中でサウジアラビアは国営の石油企業である「サウジアラビアアラムコ」の国際部門だけのIPOの検討を仄めかす声明を発表して話題となっています。今回はその狙いを探りました。
IPOによる資金調達は約5000億ドル程度
英エコノミスト誌によると時価総額数百兆円といわれるアラムコのIPOの検討は規模が巨大すぎると指摘されましたが、どうやら国際部門だけのIPOを検討しているようです。
公開株式が5%程度でも5000億ドル(日本円で60兆円弱)となり、向こう5年程度の財政の逼迫は乗り切れる見通しとなることから、今後さらに「原油価格」の下落があっても全く影響ない状況が作り出されそうなところに来ています。
したがって、一旦落ち着いたように見える「原油価格」も価格下落によるチキンゲームはまだまだ続きそうな様相を呈してきているといえ、楽観は禁物な状況となっています。
一定のデフォルトやそれに伴う業界再編までは下落継続との見方も
「スタンダード・チャータード銀行」の商品アナリストは、「原油価格は1バレル=10ドルまで下落する可能性がある」との見方を示して市場の注目を集めています。
この銀行は25ドルの見込みを出したときにも戯けた存在として市場から笑われましたが、実際にそれに近いところまで相場は下落することとなり、この10ドル節にはかなり関心が高まっています。
同行のアナリストらは、このリポートで、現在の石油市場を動かしているのは「ファンダメンタルズ」ではなく、米ドルや株式市場など、他のアセット価格の変動に伴う資金フローであると指摘しており、価格は下がり過ぎだと市場全体が認識した時に初めて底入れするだろうとしています。
しかしその水準は「1バレル=10ドル」まで下がった場合だと考えていると表明しています。
また業界全体としても米系の「シェールガス」企業の3割から4割程度が「デフォルト」したり、エネルギー系の大手が破綻に追い込まれたりして業界が再編されるまで価格は元に戻らないという見方をする向きが非常に多くなってきており、とりあえず株価は戻しても火種の「原油価格」にはまったく変化がないことがうかがえることとなっています。
この間、ロシアルーブルは最大の下げを記録しており、今のところあまり注目されてはいませんが、またしても「デフォルト」に追い込まれる可能性も色濃くなってきていることから、原油市場の変化は予断を許さない状況が継続しています。
原油の火種は再燃の可能性大
「スタンダード・チャータード銀行」のリポートがどこまで正しいかはわかりませんが、少なくとも「原油価格」自体も株式市場の影響とドルの為替相場の影響を受けて下落していることは間違いありません。原油下落が起因しているかに見える相場は、相互に負のスパイラルゾーンに入り込んでいることがわかります。
「日経平均株価」の1000円近い戻りで市場には底打ち感が広がっていますが、まだまだこれでよかったというわけにはいかないのが正直なところです。
当面NYタイムの原油先物市場の価格については、リアルタイムでしっかりとチャートを見ながら取引していくことが必要となりそうです。とくに資源国通貨とドル円については、この動きにきわめて大きく左右されることとなるため、決して気を抜けないところです。
瞬間的に「WTI原油先物」が10ドル台を示現した場合には、円高がかなり進むことになりますので、当然のことながら「ドル円115円」を下回る可能性は覚悟が必要となりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)