ECBの追加緩和示唆を皮切りに日銀の追加緩和を期待する市場は大幅な戻りを試す相場の動きとなってきていますが、リスクの本家本元である中国は旧正月の休みを控えた時期にさしかかってきており、政府の動きにも注意が必要になってきています。
休みに限って突如政策を発表するのが中国の怖いところ
2016年の旧正月、つまり春節は2月8日から2月12日までとなります。
つまり前後の週末を含めれば5日から14日までは相場は動かないことになります。こういった休場の時期に限っていきなり利下げを行ったりするのが中国のひとつの特徴になりますので、とくに休み入りの休日における動きには注意が必要となります。
利下げの場合相場の買戻しにつながりますから上昇ということで悪い話ではありませんが、一旦市場からの資金の逃避を食い止めるために元高に調整している人民元は、根本的にはもっと引き下げたいのが中国の本音となりますので、相場が動かないお休みの時期になにか仕掛けてくる可能性にも注意が必要となります。
上海総合指数は年明け17営業日で20%近い下落
NYダウや日経平均の下落ばかりが注目されますが、相場リスクの本家本元中国上海総合指数はこの年明けからの17営業日でなんと20%近い下げを記録していますから、さすがにやりすぎで一旦は戻してもおかしくないところに差し掛かっています。
おそらく春節がいい緩衝材になるものと思われますが、上海で投資を行っている個人投資家が最も気にしているのは、やはり中国人民元の動きとなっています。
ここになにか大変動が起きることになると株式市場は再び大幅下落を示現する可能性が高く、為替介入でオフショアとオンショアの二重価格がなんとか解消し、アービトラージのような状態を克服することのできた直近の人民元がどのような形で人民元安に誘導されていくことになるのかに大きな注目が集まることとなりそうです。
あらゆる金融市場にコントロールが効かなくなりつつある中国金融当局
年明けからの上海市場の混乱で明確に見えてきたのは金融市場に対して中国の金融当局の統制力がほとんどなくなりつつあることです。
株価の維持についてもかなり難しい局面にさしかかってきていることは間違いありませんし、元安についても市場の力で元が下落する局面がかなり近づいてきていることは間違いありません。
先進国でも介入は行いますが、自由経済の市場では一旦動き出した方向はそう簡単には止められないのが現実ですから、人民元安という状況が市場によって形成されてしまう可能性についても注意が必要となってきています。
ECBの追加緩和や日銀の追加緩和期待といった実に市場の期待向上センチメントから一旦はセリングクライマックスよ相場が大きく戻していますが、問題の原油価格に加え、中国市場の状況はなにも改善されているわけではありませんから、相場が再下落を始めればこれまで以上に深刻な事態に陥ることは間違いない状況です。
2007年のサブプライムからリーマンショックまでのプロセスを参考にすべき
2007年のサブプライムローンの問題では、米国住宅バブル崩壊をきっかけに世界中で株価下落、信用不安が起こり、その流れのなかで2008年3月には米大手証券ベアースターンズが破綻。
欧米の大手金融機関にもサブプライムローン関連の多額の損失が発生している懸念がやっとこの時点で明らかになっています。
さらに同年9月に入ると多額の損失を抱えていた米投資銀行リーマン・ブラザーズが、米財務省や米国の中央銀行であるFRBの仲介で韓国の韓国産業銀行(KDB)や複数の欧米金融機関に身売りして生き延びる道を探っていることが明らかになりますが、出資交渉はまとまらず、9月15日、リーマン・ブラザーズは連邦破産法第11章の適用を申請し負債総額6,130億ドルの破綻に陥ります。
ドル円は当時106円近辺で推移していましたがその後2ヶ月で16円下落を示現することとなります。中国の今回の金融不安が2016年のリーマンショックにつながるかどうかは誰にもまだわかりませんが、少なくともこの1月に起きたような相場下落はまだまだ序の口で、ある程度戻したところでまた激震がやってくる可能性はきわめて高いといえます。
セリングクライマックスというとすべてが終了したかのように聞こえますが、実際のリスク要因は何一つとして解決していませんからこれで安心するのは禁物です。
中国の春節はまさに途中休憩の時期に過ぎないことを肝に銘じなくてはなりません。
(この記事を書いた人:今市太郎)