2月11日、日本は祝日で休場であったこの日、「ヘッジファンド」などの猛烈な売り仕掛けで、朝方113円台だったドル円は夕方までに110円台にまで下落するという猛烈な円高方向への動きが示現することとなりました。
この日の夕刻、欧米の外国為替市場で円相場の不自然な値下がりが進んだため、日銀が大量の円を売ってドルを買い、円安に誘導したとする見方が広がりました。
111円台で進行していたドル円がいきなり跳ね上がり113.10円台にまで上昇したのが、これで欧米の外国為替市場では日本政府・日銀が介入に踏み切ったのではないかという噂がたち、ドル円の一方的な下落が一息つく形となりました。
しかし日銀はこの件については一切コメントをしておらず、覆面介入かといった疑心暗鬼も高まっている状況です。
実態はアルゴリズムによる仕業の模様
しかし、一発だけの跳ね上がりというのはいかにも不自然ですし、通常日銀の介入の場合、国内にある銀行を使って自らEBSも利用して継続介入するのが、2011年円高時あたりからの介入の方法になっています。
ですから、欧米の時間帯の介入はありえず、どうも様子が明らかに違うことが伝わってきます。
結局のところ本当の事は現状ではわからず、後日発表になる介入実績をみないと事実ははっきりしませんが、今回の跳ね上がりはどうも特定のファンド勢のアルゴリズムの誤動作による仕業のようで、テキストを読み込んでは反応するアルゴリズムが、注視や介入に近い言葉を複数読み込んで間違って跳ねたのではないかという見方が強まっています。
1日3円を超えないと介入できない日銀
一般的に言われているのは1日3円以上の変動がないと日銀は介入しないと言われていますし、そもそも為替の価格操作のための介入はしないということを世界的に表明してしまっている日銀はあくまでスムージングを目的として介入しかしないのが現実になってきています。
これが100円割れに近いところでの話しであれば信憑性も高まりますが、111円台などで介入するとは到底思えないのが実情であり、G20を控えて今日銀が単独介入する可能性はほとんどないといえそうです。
今後強調介入の可能性も極めて望み薄
確かにドル円で見ますと非常に円高が進んでいますし、クロス円でも円高が異常に加速したことは事実ですが、クロス円は架空通貨であり、先進各国が協調介入をするという場合には、今のドル円の状況は他国、特にドル安を容認したい米国にとってはどうでもいいことです。
ですから、G7 がこの為替状況をもってして強調介入すると言うのは、相当可能性の低いことといわざるを得ません。
もはや「金融政策」では限界が来ている中で、強調的な財政意政策を打つとも思えず、なんらかの声明は発表になるのかもしれませんが、各国通貨安政策の極みとして示現している今の相場状況に打つ手立てが登場するのかが注目されるところです。
TPPの締結も為替介入には大きな足かせに
先ごろ合意を見た「TPP」も日本にとっては為替介入の大きな足かせとなっています。
もともと、関税を撤廃し自由貿易を加速させようとする内容ですから、特定の参加国が自国の利益だけのために為替操作をするのは大きな問題であり、実際にオーストラリアなどはこうした内容が締結されてからは介入はできなといった見解を示しております。
財務省、日銀が率先してこの状況を破るわけにはいかないのもまた現実の問題となっているのです。
そもそも円安を目指して行ったはずの「マイナス金利」が不発に至っているわけですから、日銀内でもかなりショックは大きいはずで、これを物理的な為替操作で何とかできるとはそもそも思っていないようにも思われます。
ただ、介入と誤解されるような相場の動きをあえて否定する必要もないわけですから、市場が疑心暗鬼に陥るような状況は積極的に利用しようとするはずで、相場の誤解による買戻しなどには十分な注意が必要となります。
依然としてドル円は「105円」方向に向けて動いていく途上にあるといえます。
(この記事を書いた人:今市太郎)