「EU」は2月19日、ブリュッセルでの首脳会議で、イギリスのEUからの離脱を防ぐ鍵を握る改革案について、全会一致で合意することとなりました。
イギリスが移民に給付する「社会保障費」を制限できるなど、EU各国が大幅に譲歩した内容となっていますが、イギリスの国民が求めているレベルと果たしてこの内容がマッチするのかどうかが今後の大きな争点となりそうです。
この「EU」の決定を受けて、閣議決定で6月23日木曜日に国民投票を行うことを発表しています。
問題は国民がこの合意内容で納得するかどうか
今回EU首脳会談で合意に至ったのは、移民労働者の流入が例外的に増えた場合、緊急措置として、低所得者向けの税控除などの社会保障を入国後最大4年間制限できることがあります。
また、共通通貨ユーロを採用する国々の金融関連の政策について、英国など非ユーロ圏が1カ国でも反対すればEUの加盟国で協議すること、各国議会に事実上の法案拒否権を認めることなどとなっています。
これらは国民投票でイギリスがEU残留を決めた場合に限り効力を発揮するとされており、この権利を履行するためにはEU残留を決めることが「キャメロン首相」の大命題ということになります。
問題は国民がこの合意内容で納得するかどうか
今回実施される国民投票では18歳以上の「UK」国民と英国籍であり、海外に居住する期間が15年以下のものが対象となります。
元々、日本に近い「島国根性」が国民に存在するといわれる「UK」では、地続きのEU大陸の諸国とは国民感情はかなり異なり、外部からの移民に対する嫌悪感も人一倍高い国とされています。
ドイツを除けばかなり景気が回復しており、利上げさえも話題に上るほど景況感のいい国ですから、EU域内の南の国の様々な問題に金銭的な負担を強いられることに対しても、国民の不快感はかなり高いといわれております。
このあたりの国民感情が今回の投票でどのような結果として現れることになるのか?が非常に注目されるところとなっているのです。
当初はEU残留を望む国民が多いとされてきた世論調査も、直近の調査ではほぼ離脱と残留が拮抗する形となっており、前回の「スコットランド独立」を問う住民投票のプロセスを思い起こしても、6月までに何度も世論調査の結果が二転三転することをめぐってポンドが激しい上下動を繰り返すことが予想されます。
特にこうした問題は、結果よりも事前の思惑で動くことが多く、普通にしていても100PIPS程度は平気で動くポンドの売買にはかなりの慎重さが必要となりそうです。
その一方で大きく動くだけにFXでの利益を求める層にとっては、絶好の機会になることも確かであり、もしポンドを扱うのであれば、比較的わかりやすいユーロポンドかポンドドルといったストレート通貨ペアが雑音の少ない取引を可能にしてくれそうです。
企業の動きについても十分な注意が必要
この「UK」のEU離脱を視野にいれている英国の銀行業界には現在大きな異変が起きています。
いくつかの銀行は本社を英国外へ移転することを正式に検討し始めているからで、英銀行最大手の「HSBC」は英国外に本社移転を真剣に検討しており、この国民投票も視野に入れながら今後数ヶ月以内にどうするのか決定することになりそうです。
また「スタンダードチャータード銀行」も英国外への本社移転を検討中とのことで、この二つの銀行はアジアに拠点シフトを本格的に実行しようとしていることがわかります。
もともと英国の大手銀行が「UK」から出て行くことを考えている理由のひとつとして、英国当局からの課税圧力の高まりを嫌気していることがあげられています。
さらに、今回、もしUKがEUから離脱することになればこれまで絶大な地位を誇ってきたロンドンの金融市場にも異変が起こり、UKに本拠を置く存在意義が大きく、失われることも移転の大きな理由となりつつあるようで、英国の金融業界にとってはかなり大きな問題となりそうです。
ドル円やユーロが難しい時期だけにポンドディールは魅力も大きいが・・
FXの視点でいいますと、ドル円やユーロドルの動きが微妙であるだけにテーマ性のはっきりしたポンドを扱うのはなかなか面白い選択ではあります。
ただし、猛烈な「ボラティリティ」を伴う売買になることだけは覚悟が必要で、レバレッジを落とすのか資金を潤沢にするのかといった具体的な手法を考えてから順張りで対応していくことが望まれます。
また英国のメディアをリアルタイムでチェックして、現在何が起きているのか、世論調査の内容などを粒さに掌握する細目さも求められそうです。
いずれにしても、ここから6月27日までの投票まではかなりの長丁場になりますから、ポンド売りで参入するとしても利益がでたら小まめに利益確定しながらさらに様子を見ていくという機転の効いた対応が必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)
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