3月1日に行われた米国の大統領の予備選挙では「ドナル・トランプ氏」が予想以上に得票数を獲得する結果となり、現段階ではトランプ対クリントンという大統領争いがいよいよ現実のものになっています。
ヘアースタイルを始めとする見かけと、発言の内容から考えると国外にいる我々にとっては、なぜここまで「ドナル・トランプ氏」が支持を集めるのか、いまひとつ理解できないところもあります。
代議員制という仕組みをとってはいるものの、国民が投票行動を起こすことで状況が変わる米国の大統領選挙において、こうした結果がでてくるというのは、やはり社会が変化していることを暗に示唆しており、一概に否定はできない状況になってきています。
実際の政権になった場合の予測評価は完全に二分
これまでの演説や討論会で「トランプ氏」が口にした内容だけから判断すると、とてもではないが大統領の器ではないとコテンパンな評価をする向きが多いのも事実です。
しかし、実業家であり、それなりの失敗も経験している存在だけに政権が誕生すると意外に中道でまともな運営をするようになるのではないかといった楽観的な見方も広がっています。
メディアに映るトランプ氏の言動のどこまでが真意なのか、票とりだけのためにやっているのかを判断するのはかなり難しい状況ですが、直近ではトランプ氏が共和党の代表に選ばれれば既存の共和党議員が新党を結成するといった話まで飛び出すほど、トランプ氏の候補決定の可能性が高まっているようで、この先の予備選挙にさらに目が離せない状況となってきました。
意外に限定される大統領権限
国外からみると米国の大統領は強力な権限を保有した存在に見えますが、州の集まりが米国であり、意外に大統領の独断だけで動かせることは少ないという話も聞こえてきます。
共和党では80年代俳優が大統領になった際にも本当に大丈夫かと言われましたが、強いアメリカといった判りやすいスローガンで結果としては歴史に名を残す名大統領となった「ロナルド・レーガン」という存在もあることから、万が一選出されてもなんとかこなしていけるのではないかといった楽観的な観測も引き続き出ていることは間違いありません。
トランプでもクリントンでも対日政策は厳しいものに
「トランプ氏」は日米安保の見直しまで口にしていますから、実際にどこまでの対日政策の変更が現実のものになるかによって日本経済にも、ドル円の為替レートにも大きな影響を与えることになりそうです。
いずれにしても米国の保護主義政策はさらに厳しいものとなり、対日本、対円では「円安が簡単に進む状況にはならなさそう」な流れになってきているようです。
こうした動きは今後の大統領選挙戦で、トランプ氏の優勢が伝えられるとともに「円安の状況を抑える可能性」も考えておかなくてはならないようです。
怖いのは選挙結果と連動して米国の株式相場の暴落が起こること
米国の株式相場はきっかけが何であってもほぼ8年程度に1回は暴落を引き起こすことは市場でもよく知られており、いよいよそのタイミングが近づいているものの、何がきっかけで暴落が起きるかは誰にも明確には予想ができないのが実情となっています。
ただ、「トランプ氏」のような存在が大統領として決定した場合には、米国売りが加速するという可能性もまったくないわけではなく、大統領選の過程を含めて、通常の「アノマリー」を逸脱した形での暴落が起きることも想定しておくべき状況になってきています。
今市場で言われているのは、トランプ氏が大統領になった場合、確実に民主党支持者である「FRB」の「イエレン議長」は一期だけで退任するということで、「FRB」の政策にもかなり大きな影響を与えることになるのは間違いない状況です。
実際、先のことは本当に事が起きてみないとどうなるか予測しがたい部分が多すぎ、現状では敬虔に語れない状況ですが、ひとつだけ間違いないのは、今年の選挙戦でドル高が指摘されるたびに円が槍玉にあげられ、円安ドル高の支援材料はほぼ何もなくなるということです。
今のままでは「大統領選挙は円高に振られる大きな要因になりかねない」ことは覚悟をしておく必要がありそうです。これまでの大統領選の「アノマリー」が効かなくなってきているのが今年のレースの特徴になりつつあります。
(この記事を書いた人:今市太郎)