3月に入って相場の状況には多少変化が現れつつあるようで、4日の日経平均株価は年明け以来下げ続けていたところから、なんとか「1万7000円」を回復するようになってきています。
ただ、東京タイムに相場をご覧になっている方はすでにお分かりのように、ドル円は日経平均が上昇に転じても必ずしもそれに連動した動きを見せなくなっており、年度末に向けて果たしてどこまで上昇することになるのかが注目点となりつつあります。
依然として114.89円レベルを抜けられないドル円
ドル円は2月11日に大きく20ヶ月移動平均線を割り込んで以来、大きくこのラインを下回ったまま推移しており、一旦戻りを試した2月16日の114.89円レベルすら抜けられないまま週末を迎えています。
またNYタイムになると113円台の下値を何度も試しにいく動きをしており、そもそも114円台が定着しないまま上下に触れる動きを続けています。
年度末に向けて安倍政権があらゆる手段を駆使して株価の底上げを図ろうとしている状況ですが、ドル円がどこまでついていくことになるのかは依然不透明といえます。
113円台の下値ではGPIFと思われるPKOの買いも観測
東京タイムではドル円が大きく下落した局面で下値に「PKO」と思しき準公的機関からの買いが入っていることはどうやら間違いないようで、頻繁に不自然な動きも確認されています。
ただ115円台にリーブオーダーを置いている輸出の実需筋がすでに我慢しきれなくなり114円台でも売りを出してきている状況で、実需自体が上値を大きく抑える動きが明確に示現しつつあります。
また「マイナス金利」の実施から「JGB」の購入と保有を諦めた国内生保勢は海外の債券の購入に動いており、こうした外債購入に伴うヘッジとしてのドル売り円買いの動きも自然にドル円の上値を重くする結果となっています。
さらに年度末のレパトリエーションで海外から日本への資金送金が増える時期にもさしかかっていることから、ドル円の上値を抑える実需の流れは無視できないところへ来ています。
ECB,日銀、FOMCの各政策決定会合を経ても115円台を回復しないと絶望的か
3月は10日「ECB理事会」、15日「日銀政策決定会合」、16日(日本時間では17日午前3時)に「FOMC」と主要国の金融政策決定会合が矢継ぎ早に開催されます。
それぞれの政策決定は微妙に相関、逆相関の関係にあるため結果を占うのがなかなか難しい状況ですが、この3つの政策決定を通過しても尚且つドル円が115円台を回復できないとなると年度内に大きく、そのレベルを戻すのはかなり難しいことになりそうです。
年明け1月29日の日銀の「マイナス金利」導入後につけた121円40銭レベルから2月11日の111円割れのちょうど半値にあたるのが116円20銭レベルとなりますが、この調子では株が戻してもそこまで戻れるかどうかもかなり危ない状況であり、このレベルで4月を迎えると、再度下を試すタイミングの方が先に訪れることも考えられます。
ドル円の戻り水準は当然クロス円にも大きな影響を与えることになりますので、例年通り年度末に一定レベルまでドル円が戻ることを安易に期待した売買は行わずに、しっかり相場の状況を確認し、テクニカル的な指針との整合性のある売買だけを心掛けることが重要になりそうです。
2月に比べれば明らかに一息ついた感のある3月相場ですが、波乱はまだまだこれからも起こりそうで、既に予定されている経済イベントや指標の発表以外の要素で相場が動くことにも注意が必要です。
こうした予想外の要因が起きた場合、ほとんどドル円がドル買いの方向に動くことはかなり限られており、やはり注意しなくてはならないのは下方向への動きということになります。
とくに中国関連と原油については解決していることは何一つないのが実情ですから、市場にとってネガティブな情報がもたらされればいきなり大幅下落になるリスクは依然として継続していることを忘れてはなりません。
(この記事を書いた人:今市太郎)