世界50カ国で注目されはじめ、具体的に要人の辞職なども出始めている「パナマ文書」ですが、果たして為替への影響は殿ぐらい出てくるものなのでしょうか。
今回はそんなパナマ文書にフォーカスをしてみたいと思います。
そもそもパナマ文書とは・・
この「パナマ文書」という言葉はかなり一人歩きしている感がありますが、タックス・ヘイブン(租税回避地)への法人設立を代行するパナマの法律事務所「モサック・フォンテカ」の、金融取引に関する過去40年分の内部文書のことがこれにあたります。
この文書が故意なのか偶然なのかわかりませんが、今月4日に大量流出し、南ドイツ新聞を経由して国際調査情報ジャーナリスト連合(ICIJ)の手に渡ったことから大騒ぎになっているものです。
データは紙にするとなんとトラック千台分もあるということですから、尋常ではないボリュームになっていることがわかります。
TAXヘブンイコール脱税ではない
「TAXヘブン」という言葉は日本ではかなりなじみの無いもので、これイコール脱税の臭いがすると誤解される方も多いことと思いますが、タックス・ヘブンは、国際金融を活発にするために、意図して税を極端に低くしたり、全く免税にしたりする国や地域を設けところから始まっています。
発端は英国ロンドンのシティの金融特区にあります。それが英国領のケイマン諸島やバージン諸島などの島国を、税の優遇によって国際金融の中継点として使うことになったもので、今はこうした島の名前のほうが有名なほどです。
税金の安いところに本社を置くのは半ば常識になっており、個別の企業を知らべて見ますと米国のIT関係やコンサルティングファームなど同様の本社設立をしていますから、これだけで大きな問題にはならないといえます。
それでは何が問題なのか?
具体的に問題となるのは、自国に税金を払わずに海外に資産をもつ富裕層の租税回避行動がもっとも問題となります。
企業法人の場合には確かに節税方法として活かせますが個人の場合には単なる税逃れに過ぎない可能性がでてきており、それが政治家であったりすると大変なモラルハザードとってくるわけです。
イギリスの「キャメロン首相」は亡くなった実父がどうやらここで資産運用をしていたようで、今問題になっているのはその道義的責任です。
同様の問題は中国の「習近平国家主席」にも向けられ始めており、各国の政権の主要人物を揺るがす話になりつつあるのです。
しかし米国は今のところこうした動きは一切でてきておらず、このあたりが米国と対立する国や地域をターゲットにされているのではないかと囁かれている理由になります。
英国はEU離脱に絡む可能性も
現状はまだ始まったばかりの話で、どのように飛び火してくることになるのかは全くよくわかりませんが、ドルと円に影響は出てきていません。
ただアイスランドでは首相が早々と辞任するなどの動きにつながっており、今最も気になるのは英国のEU離脱の投票にキャメロン氏の動静が絡んで何か大きな動きになってしまうことではないでしょうか。
そうでなくても英国のEUからの離脱支持が過半数を超えれば、ドル高にもなりますが最も買われるのは円の可能性が高く、これを加速させる動きになった場合に為替にもいきなり大きな影響がでることになりそうです。
しかし、トラック1000台分、データにして2.6テラバイトともなりますと、どんな ネタが登場するかはまったくわかりませんので、決して安心できる状況とはいえません。とんでもないネタがテールリスクとして示現してくる可能性も捨てきれない状況です。
スキャンダルが登場しはじめたら、最初は話が小さくてもその動向をしっかりチェックしておく必要がありそうです。そのぐらい外から見ていたのではわからないネガティブなお宝が眠っていそうなパナマ文書です。
この記事を書いた人:今市太郎)