5月8日中国の4月の「貿易収支」が発表されドルベースの輸出額は、前年同月比1.8%減の1727億ドル、前月は昨年6月以来9カ月ぶりに前年同月を上回り、中国復調との見方もありましたが、4月は再び前年割れとなってしまいました。
また、輸入も同-10.8%となり、こちらは18カ月連続で前年割れを継続しています。
これを受けて5月3日の利下げ以降、下げを継続している「豪ドル」は週明けからさらに下落を加速する可能性がでてきています。4月以降大きく上昇傾向にあった豪ドルが一転して下落に転じたことで、今後のドル円の動きにも影響を与えることは必至の状況となってきています。
・5月3日に発表されたまさかの利下げによる過去最低水準の「政策金利1.75%」
「RBA」は本格的に通貨安戦争に参入したとみられ、今後さらなる下落も予想されはじめています。豪ドル円は4月27日高値86.30円から大きく下げて5日には78.18円まで下落しています。
年初来安値は、2月11日の77.59円ですが、もう目と鼻の先で、この水準を下抜くと、75円の節目まで、支持らしい支持はない状況となります。
4月に入って大きく「原油価格」が戻し「コモディティ」価格も回復したことから豪ドル円は高値を回復しましたが、この調子ではもはや夏に向けては下落の方向性を試すことになり、高金利通貨という妙味はまったくなくなったことがわかります。
一方「オージー・ドル」は、今年1月15日の安値0.6827ドルから4月21日の高値0.7835ドルまでの上昇の半値押しが、0.7331ドルにあり6日の安値が0.7380ドルですから、0.7311ドルを割ってしまうと、テクニカル的には年初からの上昇トレンドが完全に否定され、ダウントレンドに入る可能性が高まってきます。
同期間におけるフィボナッチの61.8%押しが0.7212ドルですが、ここを目指す可能性はかなり高くなると見られます。
スティーブンス総裁の後任はフィリップ・ロウ副総裁
9月に退任する「RBA」スティーブンス総裁の後任は、当初外からやってくると見られていましたが、フィリップ・ロウ副総裁が就任することとなり、現状の流れは当面継続しそうな雰囲気となっています。
スティーブンス総裁は4月におけるNYでの講演で、「中央銀行は内需を押し上げることを目標にすべきで、為替ではない」などとこれまでの通貨安志向から全く異なる見解を示して、大きな驚きとされたことから豪ドルのショートカバーもでました。
しかし、「RBA」は結局通貨安を大きく主導する形となっており、さらなる利下げも含めて豪ドルは下落傾向をたどることが予想されます。
円は益々円安に向かいにくい相場に
豪ドル安のこうした動きは対円でも円高が進むことからドル円の円安方向への回復にも影響を与えることになりそうで、円安に向けた動きからはさらに遠ざかることになりそうです。
オーストラリアは「中央銀行」である「RBA」の総裁が再三為替の水準についてまで言及しており、「IMF」などからも問題を指摘されていますが、主要国ではないことから米国財務省からは為替操作国の監視対象にはされていません。
しかしこのやり方はかなり明確な自国通貨安誘導であり、今後どこまでこうした流れを加速させていくことになるのかが注目されます。
国内では長きにわたって豪ドル円をスワップ狙いで買いから参入する向きが非常に多かったわけですが、この金利水準となってきますともはやスワップ獲得通貨とはならなくなりそうで、今後は豪ドル円を売りから入ることも視野に入れていくことが考えられます。
夏にむけては毎年豪ドル円は弱含むのが「アノマリー」となっていますが、今年はさらに下値を狙いに行く可能性もでてきそうで注意が必要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)