いよいよ今週「伊勢志摩サミット」が開催されます。国内は厳戒態勢で都内の主要地域はゴミ箱さえ撤去されて、ティッシュの一枚も満足に捨てられないほどの状態となっています。
しかし、国内メディアと本邦投資家が期待するほど世界的にはその成果に注目は集まっていないようで、一定の声明を発表することで「安倍首相」は成果を自画自賛することになるのでしょうが、金融市場からは厳しい評価が下される可能性がでてきています。
仙台G7で判った協調的財政出動実現の難しさ
仙台の「G7」蔵相会議で、日本サイドは先進国が協調して財政出動を行うことで、世界同時需要喚起を実現し、景気を改善方向に向かうといった声明を期待したのでしょうが、為替の協調的姿勢が得られなかったばかりか「財政出動は各国判断、成長促進で一致」という報道が流れ、事実上財政出動に関する先進国合意は得られなかったことがわかります。
多くの経済学者の示唆に乗っかろうとした「安倍首相」は来日したクルーグマンにまでドイツをどのように財政出動させるように説得したらいいか相談したようですが、簡単に先進国首脳を説き伏せることはできなかったようで、事実上本質的成果のないサミットとして閉幕することが見えつつあります。
世界的には、ほとんど期待のないサミットの結果ですが、妙に期待が膨らんでいる国内金融市場は一定の失望売りが出る可能性もあり、日経平均とドル円の動きには注意が必要になりそうです。
骨太の方針に対してもどこまで市場の評価が集まるかが問題
国内の株式市場はとにかく参議院選挙までに政策対応が登場することを非常に強く期待しており、海外のファンド勢もこれがでれば選挙まで一定の株高が示現するものと考えているようですが、伊勢志摩サミット後に発表されるとされている「骨太の方針」では、「一億総活躍社会」といったフレーズが計画経済を思わせる内容と海外からは揶揄される部分もあり、評価を得られるかどうかは微妙です。
具体的には、
・ 同一労働同一賃金の実現、
・ 保育士・介護職員の処遇改善、
・ 無利子奨学金の充実、
・ AI=人工知能などを駆使した第4次産業革命のための研究開発投資の促進、
・ 個人消費を喚起するための賃上げの実現、
などを列挙する予定とされていますが、市場がもっとも期待している肝心の「消費増税の先送り」が選挙前に登場しないとなれば、一定の失望を買う可能性もあり、さらに5月最終週に失望売りを加速させる可能性も考えておく必要がでてきているようです。
微々たるGDPの増加がすべてを狂わせる状況に
本来1~3月の「GDP速報値」が市場予測を大幅に下回る数字であれば、日銀も6月「金融緩和」の大義名分が揃うことになったでしょうし、政権も「消費税の上げを延期」とすんなり宣言することができたことと思います。
しかし、微々たる上昇でも一応プラスに働いたことが、出動するはずの政策のすべてを狂わせている感があり、大型財政出動も国際的な協調がはかられない中にあっては、何のためにやるのかよくわからないところにきてしまっています。
国内の金融市場もこの「GDP」が発表されて以降、もみ合いを続けており、喜んでいいのか失望すべきなのかよくわからない相場展開が続いています。
株も為替も国内では本来買い上げたくて仕方がない相場状況に見えますが、肝心の材料が出てこないことから停滞感が強まっていることだけは事実で、特に為替は円ショートが膨らみすぎているため、一旦上に押し上げてショートが切れれば、すんなり下げることも可能ですが、今の状態で売っても下がらないというジレンマに追い込まれています。
(この記事を書いた人:今市太郎)