6月16日の「日銀の政策決定会合」の政策発表前後の、ドル円を中心とした相場の動きに驚いた個人投資家の方は多かったと思います。
BREXITの投票を前にしてほぼノーマークだった「日銀の政策決定会合」にファンド勢が売り仕掛けを行ったことはほぼ間違いないようで、今BREXITをネタにしてファンド勢が荒稼ぎに動いている状況が相場から透けて見え始めています。
気がつけばドル円はまたしてもショートが最大級に積みあがり
米商品先物取引委員会(CFTC)が17日発表した14日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)のドル円のショートは、あっという間に5万5690枚と前回の4万2853枚から1万2837枚増加しました。
また、ユーロドルのショートは5万6489枚と前回の6万7112枚から1万623枚減少しています。UKのEU離脱をめぐる投票のことを考えればユーロドルもショートが増えてしかるべきなわけですが、投機筋はドル円をターゲットにして13日からの週に挑んできたことがわかります。
UKネタということになれば、誰しもがポンドやユーロをフォーカスしがちですが、UKリスクで一番動くのはヘッジで売られる日経平均と、リスクオフで変われる円ということでドル円やポンド円、ユーロ円が売られることになるのが定石ですから、ファンド勢はその中でも流動性の大きいドル円をターゲットにして仕掛けてきたことがわかります。
4月の「日銀の政策決定会合」後のドル円に売り浴びせでもそうでしたが、相場が下落する瞬間はとにかくドル円の売り持ちが増え、大幅下落のあとにはかなりのショートカバーが入るという流れの繰り返しが起きています。
ある意味ポンドなどで勝負するよりも「日銀政策決定会合」を利用して売り浴びせた方が、効率的にドル円の下落をゲットできるという見込みがあるのかも知れません。
木曜日は「黒田総裁」の会見が始まったとたんに、ドル円もこれ見よがしに売り浴びせとなり、もはや政策の内容ではなく売りのタイミングをはかるために利用されているかのようにも見えてくる残念な状況が展開されてしまいました。
解約と解散が相次ぐヘッジファンドは荒稼ぎの好機
今年も「ヘッジファンド勢」の多くは利益が確保できておらず、解約と解散の嵐の中で利益の追求に明け暮れていますが、UKのBREXITのようなイベントは最大の利益機会をもたらしてくれることから、ちょうど10日あたりから猛烈に相場にBREXITを織り込み始める売りの動きが始まっています。
ポンドはなかなかファンドだけでは動かせない状況ですが、ドル円は完全に短期に売り浴びせで一儲けする対象とされたことは間違いなく、不可解な動きが出てしまったことになります。
個人投資家としては、こうした大掛かりな仕掛けをする「ヘッジファンド」の動きを察知してすべてに追随することはできませんが、トレンドが出たと思って遅まきに順張りで追随すると、時既に遅しで、ひとりだけ置いてけぼりを食らう可能性が高まりますので、少なくとも理解できない動きは静観することが大事な判断となりそうです。
23日前に投機筋大幅撤収の可能性に注意
個人投資家としてはトレンドが出てしまえば、どんなに納得のいかない相場展開でも逆張りではなく順張りでついていくしか方法は残されていませんが、BREXITを前にした仕掛け売りの場合、その直前に大きく買い戻しが入る可能性があることにも十分注意が必要です。
なにしろ相場は短期の投機筋とアルゴリズムだけで運営されているかのような動きになっていますから、売ったら買い戻し、買ったら売り戻す投機筋が相場を動かしている以上、かならず反対売買が示現することは間違いありません。
ドル円の場合、「日銀の政策決定会合」の下落前のレベルから半値ちょっとまでは相場が戻りましたが、23日までのごく短い時間の中でほぼ全値戻しになるリスクも考えておく必要がありそうです。
今回のUKのEU離脱問題は結果が最後まではっきりしなさそうな状況ですから、ファンド勢も結果を見る前に手仕舞いする可能性はかなり高まっています。
一気に買い戻しがでればまたしたも不可解な相場の上昇に遭遇することになりますが、背景にある動きの理由は比較的単純なことが多くなりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)