皆様ご存知のように今週月曜日の朝、ポンドをはじめとして主要通貨は大きく窓空けから相場をスタートすることとなりました。
大方のトレーダーの方は、英国の国民投票に絡んで残留優位の世論調査結果がでたことから大きく買い戻しになったという報道などに納得されたことと思いますが、もちろんそれもあるものの、実際には「世界中の多くのFX業者が週末で取引に規制をかけたこと」がこのギャップアップを生んだのではないかという憶測が流れ始めています。
言われてみれば「なるほど」という話ですので、今回ご紹介しておくことにしたいと思います。
先週末の取引終了時に規制をかけたFX業者多数
いまや個人投資家が動かすFXの金額も決して馬鹿にならないものとなっており、特にポンド周りでは世界中の多くの個人投資家がポジションを事前に仕込んで持っている状態が続いているようです。
先週末の段階で世界中の多くの店頭FX業者が顧客との相対取引の条件を一時的に強化して規制したことが、実はこのギャップアップの大きな理由になっているのではないかという憶測が飛び交い始めています。
ひとつはレバレッジ規制です。たとえば日本人投資家になじみのある「XM」では週末の取引終了時に888倍のレバレッジを一時的に100倍にまで落とし、証拠金の足りないポジションを一旦強制終了にしてそのボリュームを無理やり落とす作業をしています。
レバレッジ自体は週明けの取引開始時に元に戻していますが、これは一種のフィルタリングをかけたことになるわけです。
それ以外海外の業者では一律50倍といったレバレッジ規制に乗り出したところがあり、まずこれで強制決済がでた部分がショートカバーの形で相場に現れた可能性があります。
また英国を中心とした欧州系の業者は一時的に取引手数料を16倍など大幅に広げる措置にでています。
これは端的に言えばスプレッドを手数料を理由に大きく広げた形であり、スキャルピングやデイトレ中心に取引するトレーダーはもちろんのこと、ある程度のボリュームのポジションをポンドまわりで売り持ちにしていたトレーダーがかなりのボリュームの反対売買を強いられた可能性が高いようで、こちらも週明けのギャップアップに貢献してしまったようです。
実は国内業者でもレバレッジ規制ではなく取引枚数規制をかけたところがあるようで、こうしたFX業者による一時的な取引規制強化が結果としてポンド主体のショートの枚数を週末段階で一斉に買い戻しにさせたことがほとんどの主要通貨でのギャップアップにつながってしまったことはほぼ間違いないようです。
言われてみればなるほどと思う話ですが、つまり英国の世論調査の結果で広範に買い戻しがかかったと思うと、必ずしもそうではない取引上のテクニカルな理由の可能性も高いということだけは理解しておく必要がありそうです。
状況はまだ予断を許さない
ということで、英国は残留で決着と判断するのはこの段階ではまだ早いようで、今しばらく更なる、「ゆり戻し」に注意が必要になりそうです。
こうした業者サイドの取引規制は、顧客が保有しているポジションをとにかく減らすことが大きな目的になっているようで「スイスフランショック」のときに「ゼロカットシステム」の履行で多くの業者が損害を被ったことを教訓にして、顧客の取引額を強制的に減らすことがその大きな理由になっていることは間違いないようです。
日本の業者はほとんど注意喚起しか行っていませんが、ハイレバレッジの取引を提供している業者では確かに死活問題であるため、こうした規制が厳しく事前段階から行われているというのが実情のようです。
この手の話は実際に起こってみないとよくわからないものですが、FX業者自身が相場の大幅変動から身を守るために動いている結果と見ると相場がなぜこうなっているのかを理解するのにはかなり助けになるといえます。
(この記事を書いた人:今市太郎)