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「BREXIT」騒ぎで西側の先進国が株も為替も大暴落で大騒ぎをしている割には、最近話題に上らない中国は見かけ上大きな傷も負わずにスルーしているかのように見えます。
上海の株価は大きな影響を受けずに推移していますが、果たして「人民元」がここからどういう動きをとることになるのかが大きく注目される状況です。
一部の中国メディアは英国のEU離脱で中国が受益者と報道
中国メディアの「参考消息」は英国のEU離脱により英中関係が今後親密になり、長期的には中国の経済および政治面で利益につながる可能性があると指摘しています。
EU内の団結にほころびが目立ちはじめたところで、英国との関係を強化することによりEUとの対抗力を高めていくことになるというのがその論旨になっています。
英中は2013年、中国と通貨スワップ協定を締結しており、英国は「Ｇ７」のなかで最初に中国と通貨スワップを結んだ国となっています。
さらに2014年には英国が人民元建て国債を発行したほか、中国が主導するアジアインフラ投資銀行に西側諸国として最初に加盟を表明したのも英国であるだけに、一定の信憑性のある見方ともいえます。
人民元は本当に大丈夫なのか？
Photo WSJ
しかしそんな英国の動きを前にした中国の漁夫の利のような話以前に気になるのが「人民元の動き」です。「中国人民銀行」が週明けの27日に発表した、人民元の対ドル相場の基準値は24日の世界的な暴落の日に比べ0.9％の元安・ドル高水準となりました。
これはそれでも2015年8月の大幅な切り下げ以来最大の下落率で、市場を冷やりとさせましたが、これは24日に大きく売られたことを反映しているにすぎす、2月の上海合意があったのかどうかはよく判らないものの、中国政府は直近の人民元政策を貫いている状況にあります。
BREXITを利用して切り下げをするリスクは依然残る状況
中国当局はなにも動いていませんが、BREXITが人民元の切り下げを起こしている事は間違いなく、逆にこれを中国当局が口実に使い始めれば人民元が大きく急落する可能性が高まっているといえます。
今のところオフショア人民元はオンショア人民元の下げ幅とほぼ同じで、比較的平静が保たれていますが、ドル高が進めば当然切り下げは前面にでてくることになります。
今のところ米国の利上げ観測はかなり後退しはじめていますが、米国内では商業不動産バブルが顕在化しており、本来「FRB」はこの時期に少しでも利上げをしておきたいはずで、各国の思惑の違いというものが為替相場に噴出する可能性は依然として高い状態が続いているといえます。
英国の離脱問題は9月9に日までに選出されるであろう、新たな英国首相のもとで具体的な離脱交渉がはじまることになります。BREXIT起因の見えざるリスクとして突如として顕在化しそうなのが、中国人民元リスクといえそうで、ここからはかなり注意することが必要になりそうです。
米中対話というのは継続的に行われているようですが、昨今の状況はうまく言っているのかそうでもないのかがよく判らず、すでにレイムダック化しているオバマ政権の下ではなにも決まらないことは明白です。
昨年「8月24日に中国人民元起因で相場が大きく下げた」のは記憶に新しいところですが、日経平均も今回のような英国ネタでの暴落のような事態が起きた場合、下落は一回だけにとどまらず、その後さらに大きく下げているのが定石となっており、次なるテールリスクの登場でこの夏さらに相場が下げる可能性は否定できない状況です。
中国人民元がそのリスクを担うことになるのかどうかはこの時点ではまだなんとも言えませんが、眠れる獅子・人民元がこのままおとなしくしているのかどうかは相当怪しくなってきています。
中国では5月までに1750億、日本円にして17兆8000億円の資金が国外に流出したと「ゴールドマンサックス」が試算しており、ドル高は確実に中国経済に影響をあたえていることが推測されます。
足元でパニックが起きていないのは不幸中の幸いですが、突然の「中国人民銀行」の動きには十分すぎる注意です。
（この記事を書いた人：今市太郎）
