7月29日といえば「日銀の政策決定会合」のほうに注目が集まりますが、実は同日、欧州銀行監督局(EBA)によるEU加盟国の主要51銀行を対象にした「ストレステスト(健全性審査)」の結果発表も実施されます。
ドイツ銀行は何が問題なのか?
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6月29日には「米国FRB」による「ストレステスト」が行われましたが、米国で取引を行っている銀行として「ドイツ銀行」は不合格を喰らう結果となっており、本場の欧州でも不合格となるとかなり大きな問題になることが予想されています。
今年6月「IMF」が発表したレポートでも世界で最もリスクの高い銀行として実名で指摘を受けていますので、今回不合格にでもなるようなことがあれば、かなりの金融不安を引き起こすことになり、為替相場は「日銀の政策決定会合」の比ではないリスク回避の動きになることも予想されます。
この「ドイツ銀行」のリスクというのは事ある毎に問題が指摘されては、なんとなく話題に上らなくなるという繰り返しをしていますが、同行が置かれている状況はまったく改善しているわけではなく、リスクは継続中です。
まずここまでの動きでは「LIBOR」不正の実施による損害賠償の支払いがあります。
また不良債権が増加して、その引当金も大きくなっているというリスクが発生しています。そして今もっとも市場が注目しているのがデリバティブ損失の発生懸念とされています。
デリバティブというのはFXや「CFD」などと同じで証拠金取引となりますから、損失がでればかなり大きなものになることは間違いありません。
また含み損部分については清算が完了するまでは損失がわかりにくく、かつ金融当局も株主もそれをしっかりと掌握できない点が問題を正確に把握できないといったリスクがあります。
もちろんすべてが消失することはないにしても、株から為替、「債券」「コモディティ」と相場が押しなべて暴落するようなことになれば相当な損害を計上することになり、かなり危機的な状況が示現することは間違いないようです。
春先はCoCo債も問題に
今年の2月ごろには「ドイツ銀行」のCoCo債が大きく売られて株価暴落が止まらないという事態も引き起こしています。
このCoCo債というのは資本に参入が認められており、しかも社債よりもCoCo債は有利な金利設定となっていることから利用が進んでいます。
しかもCoCo債は条件が見合えば自己資本として勘定されることから「ドイツ銀行」では積極的な利用がはかられてきました。しかし株価が下落しはじめるとCoCo債の投資家は、株式保有を望まないことから投売り状態となり、大幅な株価下落を引き起こすことになってしまったのです。
一旦は落ち着いているように見えても問題が顕在化すれば大事に
こうしたことから常に「ドイツ銀行」には悪い噂が耐えませんが、今回の「ストレステスト」で何かが指摘されると、とんでもない問題の引き金を引く可能性があり、ユーロの下落といった単純な問題だけではなく金融株全般の問題が顕在化するきっかけになる可能性があるのです。
「リーマンショック」以降、いわゆる投資銀行業務というのは米国ではかなり制限を受けることになり、それにとって代わったのが欧州系の銀行といわれます。
なかでも規模の大きな「ドイツ銀行」は人一倍リスクの高い業務に手を出し今日に至っているようで、まかり間違えばリーマン後の次の市場の大暴落はここから始まる可能性すらある状況なのです。
日本ではいまひとつこうした危機的な状況が伝わってきませんが、とにかく29日の結果にまず注目していきたいと考えます。
「IMF」によれば「ドイツ銀行」がおかしくなると即座に世界の28の銀行にかなり深刻な影響がでるとされていますから、このネガティブな波及効果は想像を絶するものなることはほぼ間違いないようで、ここからはまず「ドイツ銀行」に目を光らせることが必要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)
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