欧州銀行監督機構(EBA)は29日、欧州圏の銀行51行の健全性審査(ストレステスト)結果を公表しています。
大方の予想通り、イタリアの大手銀、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(モンテ・パスキ)の中核的自己資本(コアティア1)比率は、マイナス2.44%で最悪となり、とにかく改善のための作業が明確に必要となる状況があらためて示現することになりました。
また「アライド・アイリッシュ銀行」は4.31%でしたが、こちらも昨年の基準の5.5%を下回っており、改善が求められる状況にあります。
今回のストレステストでは米国の「FRB」のように合格、不合格という判定は出されていませんがあきらかに状況の悪い銀行については改善が求められる状況であることは間違いありません。
注目のドイツ銀行はなんとかクリアした状態
今回の調査における下位12行には「伊ウニクレディト」「ドイツ銀」「独コメルツ銀」「英バークレイズ」なども含まれている状況ですが、資本レベルが厳しく詮索されている「ドイツ銀行」は7.80%と決してお世辞にもすばらしい数字ではないものの、いきなりリスクのある状態とは言えないところに位置することとなりました。
週明けの欧州市場はイタリアの債権関係には多少問題はでるものの、これを材料にして大きくユーロが下落するところまではいかないものとなりそうです。
ドイツ銀行が抱えるリスクは依然残ったまま
「IMF」のレポートで名指しの指摘を受けている世界で最も危ない銀行のうちの一つ、「ドイツ銀行」は依然としてデリバティブ関連ビジネスのリスクが全く払拭される気配はなく、資本金などの面で安全といわれて本当に心底安心なのかどうかには疑いが残る状況となっています。
「ドイツ銀行」の経営状況については迂闊なことは口にできませんが、、不確実性が高いことだけは間違いなく、こうした「ストレステスト」などで表面に出てこない問題で、いきなり破綻につながる話が浮上しますと、そのリスクは「リーマンショック」よりも大きなものになるという見方も強くなってきています。
とくに過剰なレバレッジは簡単に改善ができるものではなく「リーマンショック」以降は米国の銀行が引き受けられなくなった案件やビジネスをかなりの部分欧州系銀行が引き継ぐ形となり、しかもその最右翼の位置するのが「ドイツ銀行」というかなり厳しい立場にあるものです。
果たしてどのように問題が表面化し、またどうやってそれを乗り切っていくことになるのかがほとんどよくわからない状態ですが「トランプ候補」が米国の大統領になる確率もかなり高まってきている中にあっては、まさかの事態として残されているもっとも大きなものが「ドイツ銀行」の破綻となるのかも知れず、今後も注意が必要になります。
とくにEU全体の信用市場が破滅的な結果に陥ることは間違いなく、われわれが一般的に想定している民間銀行の破綻の比ではない恐るべき状況に直面することになるのは間違いないものと思われます。
ただ、個人投資家レベルでは注意をしようにも破綻をいち早く知るぐらいしか他者に先んじることができないのもまた事実であり、せいぜい売りもちにしているとなんらかの最悪な状況になったときに爆発的な利益を出せるようなポジションをうまく品を買えながらもキープし続けるといった、努力が必要になるのかも知れません。
皆さんご存知のとおり相場が暴騰して儲かるケースというのはそれほど多いものではありませんが、たいがいの大きなディールは暴落、下落で培われることが多いものですから、リスクヘッジを含めて売りでキープしていると大きな利益になるようなポジションというのはここからの相場では常にひとつぐらいは考えておかれるのがいいかも知れません。
「BREXIT」以降欧州はそこらじゅうで不確実性が高まりを見せており、ユーロの地味な状況とは裏腹の環境にあることが危惧されます。
(この記事を書いた人:今市太郎)
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