7月、とうとう共和党、民主党ともに全国大会を開催し、正式に統一候補を決定することとなりました。既にご存知のとおり共和党トランプ候補に対して民主党ヒラリークリントン候補の一騎打ちとなったわけです。
拮抗しはじめた支持率
各党の全国大会が開催されるまではクリントン支持率が10ポイント以上引き離す状況が続き、いよいよ正念場が近づいて米国民もまともな判断をしはじめたのでは?といった妙な安堵感が高まりました。
しかし、両候補が正式決定して以来その支持率は拮抗しはじめ、7月26日にロイター/イプソスが公表した世論調査では、米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏の支持率は39%となり、民主党候補のヒラリー・クリントン前国務長官の37%を2%ポイント上回り、今年の5月上旬以来はじめての状況となっています。
その後の同調査では、逆にヒラリークリントン候補が6ポイントほどリードする状況に巻き返しが起きていますが、今年6月の実にプアーな事前世論調査で事実が多くひっくり返ることとなった英国のEU離脱のための投票結果を考えれば、この支持率はほぼ拮抗しており、トランプ大統領の可能性は依然残されていることを示唆している状況です。
大統領実現に向けてエキセントリック発言が減少
昨年からのトランプ候補の発言は、相当エキセントリックなものがてんこ盛りで、誰が見ても本当に大丈夫なのかという印象をかなり強くもったものですが、大統領就任が現実味を帯びてきた段階では、これまでのこうした突拍子もない発言がかなり影をひそめる状況になってきています。
メディアを通じたトランプ氏の発言だけを見ると本人が適当に思いつきで発言してきたわけではなく、かなり優秀なアドバイザーが長期にわたって調整して現在に至っているものであるだけに、ここからは不利になることは口にせず、意外にもまともな政策を繰り出してくることになるとの見方が強まっています。
ヘリマネも口にしなくなったトランプ
日本では異常に注目された「ヘリマネ」ですが、もともとトランプ候補はこれまで何度も「ヘリマネ」の実施を示唆する発言を繰り返しており、「バーナンキ元FRB議長」は日本での実施を促すよりもトランプ候補の下で政策実施を考えたほうがよほど実現性があるのではないかとさえ思えるほどの勢いでしたが、最近はすっかりそうした発言も聞かれなくなりました。
ただしトランプ氏はかなり利下げと減税、大規模な公共投資をかかげており、同氏が大統領になれば少なくとも株式市場は好感してかなり上昇する可能性が高くなってきています。
もちろんこうした手法の行き着く先はとてつもない「
インフレ」の示現でレーガンが大失敗した方向をたどりかねない状況ではありますが、少なくともクリントンによる現状の継続と比較すれば、大きな変化が訪れる可能性は高く、このままトランプ勝利へとつながることも十分に考えられる状況になってきているのです。
名ばかりの変化に辟易とする低所得者層
グローバリゼーションが進展してからというもの、米国社会では所得格差は一段と進み、本当に1%以下の限られた層が利益をほとんどを年収にしてしまうという「圧倒的な格差社会」が現実のものになってきています。
「
サブプライム」「
リーマンショック」以来米国での持ち家比率は大きく下落し、足元での不動産バブル状態も庶民にはなんらプラスのメリットを提供しない状態で、史上初の黒人大統領が誕生しても、なんの「チェンジ」も起きなかっただけに、史上初の女性大統領には期待できないという国民の冷めた始点も見え始めています。
とくにヒラリークリントンは、ワシントン政治のインサイダーの中心人物であり、国民の変化欲求に応えられないと見る向きが多いこともトランプとの支持率を拮抗させる大きな原因になっているようです。
もうひとつのまさかは9月のFOMC利上げ
米国の大統領選が激化していることを受けて、9月、11月の事前段階における米国「FRB」の利上げはないであろうという安堵感が広がっています。
しかし、このまま株高と不動産バブルを放置しておけばろくなことにはなりませんので、9月利上げの可能性も海外のファンド勢は視野に入れ始めているようで、8月末のジャクソンホールでの「
イエレン議長」の発言に再度注目が集まり始めています。
トランプの大統領就任も米国の利上げもまだ確定事項ではありませんが、どちらが実現してもドル円については円高が進むことになり、選挙戦の終盤ではドル安誘導が両候補から飛び出すことはもはや間違いないようで、本当の円高がやってくるのは9月以降になりそうです。