お盆休みで欧米でも夏休み真っ盛りのこの時期、ドル円は例年円高になりやすいものですが、今年も「短期投機筋」の仕掛け売りで見事に100円割れを示現させることができたようです。
市場の噂では、こうした仕掛け売りをしたのは「米系の短期投機筋」であろうということになっていますが、真相はさすがにわからない状況です。
ロンドンタイムに100円割れ
16日の東京タイムは朝から軟調で、相場は早々と101円台を割れ、100.500円のストップ、100.300円のストップを次々とつけたものの、そこから100円を切るまでには日本時間の夜8時まで時間がかかることとなりました。
どうやら100円には「バニラオプション」があったようで一旦切れてからも100円をはさんで上下するという典型的なオプション設定時の動きが見られましたが、夜9時半の米国の経済指標、CPIの悪化を受けて一気に99.532円まで下落を深めることとなり、久々に99円台中盤まで下押しすることとなりました。
しかし、CPIとほぼ同時刻にダドリーNY連銀総裁のインタビューが報道され、「利上げの時期に近づいている。9月の利上げはあり得る。状況を考慮すると10年債利回りはかなり低い」といった発言をきっかけにしてドル円は一気に反転することとなり、その2時間後の午後11時半には100.531円まで大きくショートカバーが出る形となりました。
100円は切れ、しかもかなりしっかり下押しはしたものの滞空時間は短いもので終わったわけです。
基調は下落方向~でもここからの深追いは禁物
こうしたお盆休み中の円高仕掛けというのはこれまではよく見られたものですが「アベノミクス」で「金融緩和」が始まってからは夏場は膠着相場になることが多く、久々にはっきりとした仕掛け売りを見ることができた感じです。
今週一杯はまだ夏休みモードが続くため、もう一回下押しも考えられないわけではありませんが、買いも売りもそれなりにストップがついていますので、99円台はさらにスカスカの状態でここから大きく下げることがあるとすれば、26日のジャクソンホールでの「イエレン議長」の講演の後になる可能性が高いといえます。
短期投機筋による売りは必ず買い戻すことが宿命となるため、大きく下げてもそれなりの「ショートカバー」がでるのが世の常で、今回もまったくそうした定石どおりの動きになっています。
102円台中盤からの仕掛け売りとしては短期間で3円近く抜けていますから、仕掛けたサイドはそれなりの達成感があったのではないでしょうか。
ただ、99円台は意外にも半ばのあたりが底堅く、簡単には下抜けしないことも今回の下落でよくわかりました。ここからの大幅な下落にはそれなりの材料が必要となりそうで、迂闊に底値近辺での売りについていくとショートカバーで踏み上げられるリスクもあることが見えてきます。
しかしながらその一方で、上値もかなり重そうで、102円台がさらに遠くなったようにも見えます。
お盆明け、とくに来週からは「実需」の輸出勢が戻ってきますので、休み期間中につかなかったリーブオーダーを見てさらに売りのレベルを下げてくる可能性があり、引き続き上値は重くなりそうです。
ここからは月末に向けての仕込に着目
相場の全体感としてはやはり上昇よりは下落の可能性が高まっていますが、場が薄いなかで米国の地区連銀の総裁が「利上げ示唆発言」をしますとそれなりに戻ることもあり、丁寧な戻り売りで対応していくことが重要になりそうです。
ラリーウイリアムスが8月後半からの相場の下落に注意を促していますが、それがそのまま現実のものになるかどうかは別として、少なくともドル円については下方向はまだあるものと考えたほうがよさそうな展開になってきています。
例年9月の第二週前の8月19日あたりから秋口の相場の予兆を感じさせるような動きが顕在化してくるものですが、今年後半に向けての動きもこのあたりからその片鱗が見えてくる可能性があります。
(この記事を書いた人:今市太郎)