Photo Reuters
この4日から中国・杭州で「G20」会議が開催されますが、昨年8月の人民元切り下げとは違い、もっぱら政治外交的な話だけがクローズアップされるようんあっています。
中国はとにかく経済問題に焦点をあてた会議にしたいようで、日本にまで根回し外交をして調整を進めているようです。
確かに南シナ海の問題も重要ですが、投資家にとってもっと重要なのは、中国が本当に経済的に大丈夫なのか?という問題です。
BREXIT騒動で目立たぬ人民元
今年2月の「G20」 会合で極秘裏に締結されたのではないかといわれる「上海合意」の話が出て以降、中国人民元の話というのはほとんど市場でクローズアップされなくなっていますが、よくよく相場を見ますと、昨年8月24日にフラッシュクラッシュで株も為替も暴落したときのレベルよりも今のほうが断然下がっており、一体なにを大騒ぎしたのかと思われる推移になっていることがわかります。
為替市場というのは実に不思議なもので、市場全体がテーマとして認識しませんと、どんなに状況が変化してもほとんど材料視しないのが大きな特徴です。そういう意味ではこの半年間程度「中国ネタ」は相場を動かすドライバーにはなっていないことがわかります。
ただ、外貨準備高にしても不思議な状況が続いていることは間違いなく、話題にならないから安心できるとは口が裂けてもいえないのが中国の状況であり、今年は政治の年だけにあらゆる問題が押さえ込まれているようですが、早晩リスクが顕在化してくることが予想されます。
「BREXIT」で各国通貨が大きく変動した中にあって、人民元は少しずつ安く誘導されている感がありますが、ほとんど問題になっていません。しかし過去1年で2回も急落して世界市場を揺るがしているだけになぜこのように落ち着きをはらっているのかは逆に不気味に思えてなりません。
中国人の爆買いがいつのまにか終了
ところで日本では長く中国人観光客の来日と「爆買い」が話題となり経済的にも一助となしてきたわけですが、この4月からの観光客の爆買いはすっかり沈静化し免税店を立ち上げた多くの量販店は一転窮地に立たされるようになっています。
「習近平」政権が今年4月、低迷する国内消費のテコ入れ目的で、中国人旅行者が外国で購入し、国内に持ち込む物品への関税を引き上げたのがその大きな理由で、同時期に円高と人民元安が進行したため、中国人旅行者たちにとって、日本での商品購入は決してお得なものではなくなってしまったというのがその原因になっているようです。
日本百貨店協会によると、免税売上高は今年4月から7月まで、4カ月連続で対前年同月比を下回ったそうで、免税店で有名なラオックスは赤字転落という笑えない状況に陥っているようです。
中国の外貨準備は今年2月以降、落ち着いた推移となっており、あまり問題にはなっていませんが、外貨取引は、企業・個人ともに外貨専用口座を通じて行われるため、当局はその気になれば厳格に監督・管理を行うことができるとされており、海外での物品購入なども外貨の流出を食い止めるために厳密化されている可能性は十分にあります。
当面政治的に押さえ込んでもまた問題は噴出か
4日からの「G20」では国際社会の一員として中国が大きな役割を果たす存在であることを強調して無難に会議は終了することになるのだと思いますが、中国は外交的な問題、つまり南シナ海に関する問題が会議で遡上にあがることを酷く嫌っているようです。
早期に憲法改正を狙う安倍総理があえて会議の席上でこの問題に触れることになれば、日中関係は一気に険悪化することも考えられ「地政学リスク」が為替にもたらす影響について考える必要もでてきそうです。
米国の利上げ話の影に隠れてあまり目立たないこの中国の「G20」会合ですが、週末はそれなりにリスク回避をしてポジションを持ち越さないなどの対応が必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)