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相場の世界には突然市場のテーマとして、大きくクローズアップされる事象とういうものが結構存在するものです。
足元で関心が高まっている「ドイツ銀行」の破綻リスク問題も実はそのひとつといえるものです。
この「ドイツ銀行をめぐる問題は昨年あたりからも何度となく話題にはなりましたが、それが継続することはなく、今回9月21日の「FOMC」以降に急激にまたクローズアップされることとなったのはご存知のとおりです。
これは「ドイツ銀行」が米国の司法当局から、日本円にして1.4兆円という巨額の制裁金支払いを求められたことに端を発して、その負担に同行が耐えられるのかどうかという懸念が高まったことがきっかけとなっています。
実は今回「ドイツ銀行」だけではなく英国やスイスの銀行も、額は異なるものの同様の制裁金を求められる形となっており、同行だけが特別な状況にあるわけではないのもまた事実なのです。
なぜこの時期なのかという基本的な疑問も
今回「ドイツ銀行」が求められている制裁金は、2005~07年の住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売を巡るもので、米国の銀行はすでに制裁金の支払いに応じているものです。
支払い自体は行わなければならないものであることは間違いないようですが、なぜこの米国大統領選挙が架橋に入るこの時期に、あえて米国の司法当局が同行に攻撃を仕掛けてきたのかという話になると、長年一人勝ちを続けてきたドイツに対する、米国政府の包囲網の一環なのではないかとする陰謀説が登場してきても妙に納得できてしまいます。
また多くの金融機関はこうした制裁金の金額について、司法当局と交渉をすることで減額することに成功していますが、「ドイツ銀行」の場合あえて同行の時価総額よりも大きな額を要求すると発表することで、そのリスクの高さをかなり高める動きに米国側が打って出ているように見えるところも気になるところです。
まあ陰謀説に関してはいくら憶測してみたところで何にもなりませんが、時期的なものも含めて何かの意図が働いているといわれると妙に納得する部分も多いのです。
米国の株式市場にも少なからぬ影響
こうしたグローバルレベルでの金融リスクの高まりは当然のことながら米国の株式市場にも多大な影響を与えることは避けられず、現実に足元ではNYダウをはじめとして株価が下落を始めています。
そうでなくても大統領選挙年の10月というのは米国の株価は弱含みに動くものなのに、さらにそれに拍車をかけるような動きを米国政府自身がこのタイミングに行おうとしている真意は確かによくわからない部分も多いといえます。
見方をかえれば選挙よりもっと前にこうした制裁金の交渉をすることもできたはずですし、逆に選挙後に行うこともできたはずで「なぜ今なのか」という点は確かに腑に落ちない部分が相当残ります。
アンチ・クリントン勢力の選挙戦略?
足元では「ドイツ銀行」の顧客である「ヘッジファンド」の一部、10社あまりが同行へのエクスポージャーの縮小に動き出しているといったさらにネガティブな報道が飛び出し、「ドイツ銀行」株は続落の動きとなっています。
こうした流れを考えると、米国側でも十分にわかっていてこの時期に株価に合えて影響を与えるような動きをしている勢力が存在するのではないかと疑う向きが登場しても仕方ない状況です。
つまり株価下落で大統領選挙に不利な戦いとなるクリントン勢に、あえてさらなるダメージを与えるために動いている勢力の存在を疑う話もではじめているのです。
確かに大統領選挙直前に大きく株価が下落してしまいますと、その後の政権は既存の政党から対立する政党に移ることが非常に多くなっているという過去の結果があり、トランプ優位を狙った動きのひとつとしてこういう画策がされているとしても不思議はありません。
こればかりは真偽のほどを確認しようにもどうにもならないものですが、なんともきな臭さを感じる動きであることは間違いありません。
市場はドイツ銀行の隠れた経営状態に疑心暗鬼
一部の金融アナリストからは「ドイツ銀行」が足元の問題で破綻することはない。といったコメントも出されていますが、一旦リスクを意識した市場は、さらに隠れた「ドイツ銀行」の経営リスクが登場するのではないかと疑心暗鬼になっており、少しでも悪いネタが市場に登場するたびに金融株全体が下落するというクリティカルな状況が継続しています。
9月に公表された同行のインベスター・リレーションズ資料によりますと、同行のデリバティブへの総エクスポージャーは想定元本で46兆ユーロ(約5215兆円)相当で、ネッティング(相殺決済)と担保を含めるとデリバティブ取引の資産は410億ユーロになるとの説明がなされております。
事前の市場の噂よりも若干規模が小さく見えますが、これが本当に大きな損失をかかえていないのかということについては市場はかなり懐疑的で、噂が駆け巡るだけでも破綻になりかねないリスクに直面した状況は依然継続中です。
一方で米国のモルガンスタンレーが買収するのではないかと言った噂も飛び交いはじめており、実態以上にリスクのほうが高まっていることを感じます。
したがって為替相場もさらに悪い報道が飛び出して、一時的に相場が下落する可能性についてかなり意識した売買をする必要がありそうですし、週末の休みを越えたポジションの保有などにも相当気を使う必要がでてきています。
とくに予想以上に大きなダメージが出た場合、それをきっかけにした市場の暴落も確かに否定はできない状況です。
(この記事を書いた人:今市太郎)