いよいよ米国大統領選挙まであとちょうど一ヶ月となり、ここからはどちらの候補が勝つかがかなり大きな話題となりそうですし、それにあわせて為替相場が大きく振れるリスクも高まりつつあります。
日本国内ではクリントン優勢といった報道が多く、ほとんど大勢が固まったかのような内容も見られています。しかし第一回目の直接対決によるテレビ討論の後も大きくトランプの支持率が下がったわけではなく、このまま何事もなく選挙が終盤を迎えることになるとは思えない状況で、かなり注意が必要になってきています。
とくにトランプ劣勢と安易に断定してしまうのはさすがにまだ早いようで、ここからの動きを冷静に見守る必要がでてきています。
1995年の確定申告暴露でも支持率の下がらないトランプ
ニューヨーク・タイムズは、米大統領選の共和党候補トランプ氏が1995年に9億1600万ドルの損失を申告していたと報道し、トランプ氏がこの損失計上により税額控除を受けた結果、最長18年にわたり連邦所得税の支払いを免れていた可能性があるとすっぱ抜きの報道を行いました。
日本ですとこういう話がでると蜂の巣をつついたような大騒ぎになるものですが、米国ではこれによる支持率の低下はほとんどなく、むしろ「節税を適切に行った人物」として納得する動きも出始めています。
そもそもこの1995年は元からトランプ氏が自らのカジノや航空会社ビジネスなどで、莫大な損害を出していたことはよく知られていてことであり、923億の損失計上といってもそれほど驚くべきものではないというのが国民の大多数の見方になっているわけです。
しかもその未曾有の損失は翌年以降にも繰越計上することが可能なのは、トランプの脱税の悪巧みではなく租税の仕組みを利用したにすぎないわけですから以降の18年間徴税を逃れたのも脱税とはなんの関係もないことを改めて示す結果となってしまい、足を引っ張ったのかむしろ事実の透明性を裏付ける結果になったのかよくわからない状況になってしまっているのです。
日本人にはよくわからない米国民のセンチメント
トランプの見かけや話し方、話の内容などを考えれば、そもそもの資質としてこの人物が大統領候補なのかという疑問は世界中のテレビを見る視聴者の大きな疑問であることは間違いないわけです。
しかし、くじ引きであたって間違って候補者に選ばれたわけではなく、ヒラリークリントンとの対比の中で支持率を拡大しているという厳然たる事実からは目を背けるわけにはいかないところもあり、このあたりを個人的な感情で理解していしまうと、11月8日の選挙結果で思わぬ損を出しかねないリスクが高まっているといえます。
オバマ政権8年で、当初に多くの国民が期待した「チェンジ」という言葉が、額面通りにならなかったことをもっとも嫌気しているのが当の米国民であるという事実は逃れられず、ヒラリークリントンは女性大統領という点では確かに史上初で斬新な存在ではありますが、そこからもたらされる期待が極めて低い点には十分な注意が必要となります。
ともあれ、米国民を除けば、大方の海外メディアはトランプ劣勢を伝えていますので、これでトランプ勝利が点灯することになれば少なくとも為替相場が大きく「リスクオフ」に傾くことは間違いなくなってきています。
いよいよ104円への戻りを試そうとしているドル円は、果たして11月8日の時点でいくらのレベルまで戻しているかはよくわかりませんが、仮に105円であるとしたら1日のうちに95円程度まで10円ほど蹴落とさらる可能性は十分にあり、またそうなると日本政府が為替介入に踏み切る可能性も高くなり、往復で大きな儲けがとれるこの秋最大の為替イベントになることが期待されます。
思い込みは危険ですがこうしたシナリオがまだ残っていることについては忘れずにいたいものです。
(この記事を書いた人:今市太郎)