為替相場は材料こそ豊富にあるものの、市場が一体何をメインテーマにしているのかいまひとつわかりにくく、ハード「BREXIT」で大きく振らされたかと思えば、急に中国の経済問題がクローズアップされるなど、突然思わぬ動きが顕在化することから、結構巻き込まれて損失をかかえてしまった個人投資家の方も多かったのではないかと思います。
そんな中ですでに勝負ありと思われる動きになっているのが米国の大統領選挙で、19日(日本時間20日)に最後の1回のテレビ討論会を残してはいますが、米国のほとんどのメディアの分析ではクリントン優位がさらに強まっている状況で、金融市場はまったくトランプ政権の誕生を織り込まなくなっているといえます。
しかしビッグデータにも依存せず、賭け屋のオッズ頼みで安心しきった英国のEU離脱投票は、ふたを開いてみればまさかの「EU離脱決定」という驚くべき結果に直面していますから、これだけ圧倒的有利と思われるクリントン候補が勝利宣言すら出せないあたりに、まだこの選挙のよくわからない部分が隠されているといえそうです。
FiveThirtyEightが開示した面白いデータ
米国のネイト・シルバー氏は独自の統計解析手法により、2008年の大統領選挙で全米50州のうち49州の勝敗を的中させ、その後の2012年の大統領選挙ではすべての州でその勝敗を的中させた人物で、データ駆動型の分析を政治ジャーナリズムに取り入れた先駆者として、全米では広く知られている存在です。
その同氏が開設しているのが政治ブログFiveThirtyEightで、今回の大統領選挙でも米国内では非常に注目の集まるメディアとなっています。
そのFiveThirtyEightが先ごろ公開して話題になっているのが、全米の男女別の2大候補への支持率のデータです。これを見るとヒラリークリントンが迂闊に勝利宣言できない理由が見えてくることになります。
女が嫌うトランプ、男が嫌うヒラリー
トランプがとにかく、かなり下品な存在なのはもはや説明するまでもありませんが、FiveThirtyEightが独自のデータに基づく分析によりますと、とにかく女性からはまったく支持されていないのは明白で、ある意味ではこれが致命的な状況の大きな原因になっていることは間違いないといえます。
しかし、これが男性有権者だけを対象にしますと状況が一変していることがわかります。男性有権者のほうはヒラリークリントンがまったく好きではない状況で、全米のマップの色を見ただけでもその差歴然であることがすぐにわかります。
なぜここまでヒラリークリントンが男性有権者に好かれていないのかはいまひとつよくわかりませんが、上から目線のものの言い方や外側にでてこない、いかがわしさといったものはまったく男性に評価されていないのが実情で、これが今ひとつ勝利宣言に繋がらない大きな要因となっているようです。
トランプがかなりおかしな存在であることは間違いありませんが、男性有権者にとっては決定的に嫌われる要素にはなっていないようです。
よくよく考えてみると、ヒラリーの旦那さんにあたるビルクリントンも表面的には聖人君子のように振舞っていましたが、モニカルインスキーとホワイトハウス内で不適切な関係にあったことなども公になっていますし、箇条書きにすればトランプとたいして変わらない存在であることも妙な形で支援材料になっているようです。
依然としてまさかのリスクへ備える必要はまだありそう
普通に考えればここからトランプ大逆転というのは考えにくい状況ですが、全米の12州は依然としてどちらの候補が優勢なのかこの場に及んでもはっきりしませんし、ここへきてウィキリークスが徹底してヒラリー攻撃に回っているなど、足元を掬われかねないネタもまだかなり存在しているようですから、すっかり安心しきるのは危なそうです。
クリントン勝利ならドル高、トランプ勝利でリスク回避から大幅円高と見る向きも多いようですが、トランプの場合、その存在自体がリスクですから円高は間違いないとしても、ヒラリー勝利でドル高にはならない可能性も高まっており、どちらに転んでも円安への支援材料にはならないことを想定しておく必要がありそうです。
となると選挙結果後から12月14日の「FOMC」結果発表までは、大きく円高へ回帰するリスクに注意が必要で、特にトランプ勝利ならば足元から1000ポイント下落までは覚悟しておかなくてはならなさそうです。ベストなリスク回避策はやはり直前にはポジションを手仕舞い、結果がでてから動き出すということでしょう。
(この記事を書いた人:今市太郎)