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為替相場は米国の大統領選挙と12月の「FRB」の利上げのことで頭が一杯という感じで、膠着気味に推移していますが、実はその影でユーロ圏にとっては、年末最大のリスクイベントが実施されようとしているのです。それがイタリアで12月4日に実施が決まっている国民投票です。
日本国内や米国ではほとんど取り沙汰されていないものの、ユーロ圏では既にかなり話題になりつつあるようで、米国の大統領選挙が終われば12月14日の「FOMC」よりも前にこのイベントが実施されることになることから、急激にその内容に注目が集まることになりそうです。
なぜ今憲法改正なのか？
イタリアというのは知っているようでも結構よくわからないことが多い国のひとつですが、この国は過去70年で63回も政権が変わるという、どこかで聞いたことのあるような国であり、しかも今回の憲法改正の最大の争点は議会にお改革にあるのです。
イタリアは日本と同じように二院制になっていますが、とにかく定数が多く、しかも過去の歴史でムッソリーニのファシズムなどの苦い経験を踏まえて、上下両院に同等の立法権限が与えられているために、上院と下院でねじれ現象が起きると何も決まらないというかなり深刻な状況に陥っているのです。
今回レンツィ首相は上院の定数削減と権限縮小、つまり上下両院の立法権等を同等から下院優位にするかどうかと地方自治体の単位『県』の廃止の是非を問う国民投票に打って出ることになり、もし憲法改正が否決されれば辞任も示唆する状況となっているのです。
改憲反対が決定なら総選挙も
問題なのは、レンツィ首相が進退をかけて臨んでいる投票の割には、国民は冷めている状況にあり、そんな中でむしろ反対派の勢いが増しているのが実情であり、これで首相辞任、総選挙となると右派が登場してこの国もEU離脱が大きなテーマになる可能性が高まっているわけです。
どこの国も改憲となると政治家と国民との間の温度差が顕在化してくるようですが、イタリアもそうした国のひとつということができます。
またイタリアは銀行の破綻問題もかかえており、その不安定さは尋常ではありませんから、こうした一連の政治イベントを経て流れが大きく変わることになるとフランスにも影響を与えることは必至で、EUはその存続にむけてかなり大きな問題に直面することになりそうです。
当然選挙結果を受ければユーロが売られかねない状況であり、とんでもないことから市場は年末いきなり「リスクオフ」に向かう可能性もでてきているというわけです。
ユーロはまたして対ドルではパリティ方向に
ここのところ長くレンジ相場でもみ合いがつづいてきたユーロドルですが、秋口一旦上昇を試すような動きを見せたものの、ポンドの下落に引きずられてまたしても下落のリスクが高まりつつあります。
気がつけば1.1も割り込むレベルに至っており、いきなりパリティを試しにいく状況ではないものの、イタリアの12月の選挙結果次第ではまたしてもパリティに近い方向への下落を再現しそうな流れになってきています。
政治が為替に影響を与える時代
英国のハード「BREXIT」といい、米国の大統領選挙といい、政治が為替相場に大きな影響を与える年が2016年の特徴ともいえる状況ですが、投票結果次第でどうなるかわからないような内容のものは、あらかじめ決めうちしてポジションをもってしまいますと非常にリスクの高い博打に近いものとなるため、その対応がかなり難しくなります。
かといって何もしないで見ているわけにもいかないのですが、米国の大統領選挙でもそうであるように結果がでるまでは日柄調整のような動きになってしまい、意外に投資妙味の低いケースが多くなるのが気になるところです。
今年は例年の半分程度の動意しか見られないユーロドルですが、こうしたイベントを経て大きな動きが示現するかどうかにも注目が集まります。
（この記事を書いた人：今市太郎）
