突然教権を振りかざしてハード「BREXIT」へと突き進もうとしていることがわかったメイ首相ですが、議会は猛反発しているものの、国民のほうは逆にそれを支持し、EU単一市場へのアクセスよりも移民制限を重要視しているという世論調査が開示され話題になっています。
25日のNYタイムはドルがあらゆる通貨に対して強い動きをしましたが、こうした世論調査の結果が発表されたことなどを受けてメイ首相が国民の気持ちに沿った動きをしていることが判明し、ドル円は大きく売られることとなりました。
これが英国民の総意であるとなるとここからはポンドがドル円の上昇をさらに阻む可能性があり、ポンド中心のクロス円の動きに注意を払う必要があります。
シティの金融サービスの国外移転をもろともしない英国民
「ロンドン・シティ」を中心とする英国の金融サービスビジネスは「GDP」の12%を誇り、200万人以上の雇用を創出する大きなビジネスとなっています。
英国民はそれを失うよりも、国全体で移民に職を失われることや労働人口の増加による賃金の低下を心配していることが今回サーベーションがITVのために実施した世論調査で明らかになり、調査回答者の実に58%がメイ首相のハード「BREXIT」を支持していることがわかりました。
島国における外国人流入というのは日本国民もこれにかなり近い意識をもっているようですが、EUにあれこれ指示されて、移民を送り込まれることを良しとしていない国民が多いことに加え、経済的損失よりも移民の数が増えることに我慢がならない、非合理主義の感情的な人たちが実に多いことに改めて驚かされる次第です。
米国におけるトランプの大統領候補への進出もよくわからない部分が多いわけですが、英国民のこの頑なな移民流入への気分といったものもその国の国民でないとなかなか理解しがたいセンチメントであり、一般的な損得勘定では語れない部分が多く残されている点を軽く見てはならないことを改めて感じさせられます。
過度なマイナス金利の長期化を望まないといいはじめたドラギ総裁
また25日にドイツ・ベルリンで開催されたイベントで講演した「ECB」の「ドラギ総裁」は極めて緩和的な政策に伴う金融業界のコストが増大している現状を認識しており、過度に長く「マイナス金利」を維持することは望んでいないとの立場を示し、「マイナス金利」を早晩撤回する可能性を示唆しています。
12月の「ECB理事会」では今後の緩和措置に関する一定の枠組みが示されることになっていますが、「マイナス金利」の終了などを含めたテーパリング的な色彩の強い内容が提示された場合にはユーロがドルに対して大きく買い戻される可能性もあり、とくにこれまでたまりに溜まったユーロドルショートが解消されることになれば大きくユーロが跳ね上がるリスクもではじめてきています。
またその一方でEU離脱問題がかなり前面にでてくるようになれば、ポンドの下落を含めて再度ユーロ全面安へと展開する危険性が高まることになり、なかなか先行きの判断が難しい相場が継続しそうな雰囲気です。
来年の為替相場はあきらかにユーロの時代へ
今年は米国の利上げや大統領選挙でドル主体の動きが為替市場の中心となりましたが、来年については明らかにユーロ主体の相場になることが予想されます。
例年の半分程度しか動かなかったユーロドルですが、来年は各国で総選挙や大統領選挙が目白押しで、しかも英国のEU離脱の枠組みもより鮮明になってくることからユーロがよくも悪くも動く時代となることは間違いない状況です。
さらに、そこにポンドがユーロの動きを増幅させることが考えられ、相当な注意が必要になりそうです。逆に言えばドル主体の相場は今年中にある程度の決着がつく可能性が高く、一旦頭を切り替えて新たな年の相場に向かっていく必要がありそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)