依然として不透明感たっぷりのエルドアン政権

トルコはこの7月にクーデター未遂事件が発生しているのはご存知のとおりですが、クーデターのリスクも高いものの、その後のエルドアン大統領の国内での官僚や公務員、放送局への締め付けなどはおよそ民主国家とは思えないほどのレベルに達しており、トルコリラは安定的に運用できる通貨ではなくなりつつある大きな問題を抱えています。 

さらにEUとの関係も最悪な状況に発展中

当然トルコ側は反発しており、トルコは難民対策をめぐるEUとの合意破棄を示唆して事は難民問題の拡大に発展する恐れさえ出始めています。

エルドアン大統領は、EUが次の行動に出れば欧州を目指す難民らに国境の門は開かれると警告を発しており、状況次第では決定的な関係破綻すら起こしかねない状況です。

米国の利上げで資金の流出加速のリスクも

 トルコリラ円は24日のトルコ中銀の政策決定を受けて一旦は吹き上がる形となりましたが、この先米国の利上げも待ち構えており、国内からの資金流出が進むリスクは依然高めであり、さらに下落する可能性を考えておかなくてはならない状況です。

トランプ勝利が決定的となった11月9日にはトルコリラ円も一時30.718という安値をつけていますから、スワップで稼いでも相場で1割を超える下落を示現してしまってはさすがに利益にはならない状況であり、よほど注意深く買いを入れるポイントをさぐる必要がでてきています。

とくに米国が2017年以降どのように利上げするかによっては、足元の状況がさらに悪化することは間違いなく、よほどの底値で買いを入れられない限りはまだスワップ狙いでトルコリラ円を扱うのは時期尚早といえそうです。

ロシアや中国との接近が進めばさらに下落のトルコリラ

トルコはここへ来てEUから離れロシアや中国との連携を進めようとする動きも見せ始めています。

エルドアン大統領は、イギリスをまねたのかEU加盟交渉継続の是非を国民投票で問う構えを繰り返し示しており、EUの神経を魚でする状態が続いています。

本来トルコは北大西洋条約機構・NATO加盟国のはずですが、最近ではこのNATOに対抗する目的で結成されたはずの中ロ主導の上海協力機構SCOにさえ加わる可能性を示唆しており、これが正式に決定することがあれば欧州との対立は決定的なものとなり、難民がトルコから欧州にさらに押し寄せる可能性さえ高まり、EU全体にも問題が波及しそうな勢いです。

もともとオスマン帝国以来の感情的な溝のあるEU圏とトルコですから、簡単に関係がよくなるとは思えない状況であり、為替で考えたときには8%という「政策金利」は非常に魅力的なスワップポイントとなるものの、それだけの材料では迂闊にトルコリラを買えない政治状況が継続しそうな様相を呈しています。

現実的には米国の利上げを見てからどのようにトルコリラ円相場が展開するのかの様子をしっかり見極めてからでもエントリーは遅くなさそうな雰囲気となりそうで、相当な注意が必要であることを十分認識したうえで取り組まれることをお勧めします。

（この記事を書いた人：今市太郎）