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市場はすっかりトランプ相場に翻弄され、NYダウもいよいよ2万ドル超のところまで上昇している状況ですが、その影に隠れる形で中国の外貨準備にまたしても異変が起きています。
FX市場というのは実に不思議なもので、市場のテーマが特定の領域に集中しはじめてしまいますと、すっかりほかのことが問題にならなくなるという特殊な性格を帯びています。
そのひとつになっているのが中国の問題で、人民元安も外貨準備もかなりの異変をきたしているにも係わらず、とうとう今年は3月以降ほとんど何も問題にならずに年を越そうとしています。
しかし実際に起きている内容は決して見逃すことができないものであり、下手をすれば年明け早々にも中国ネタで為替市場は厳しい年初の洗礼を浴びせられる可能性も出てきており、その状況をしっかり押さえておく必要があります。
中国人民元は資本流出の影響で大きく下落
足元の中国ネタといえばトランプが台湾と電話会談を実施したことで、すっかり中国が面子を潰されたといった話が前面に登場していますが、その影で中国から資本流出がとまらない問題も顕在化しつつあります。
今月の「FOMC」では利上げは確実となっていますから人民元はこの冬益々下落を続ける可能性が出てきている状況で、2015年8月のフラッシュクラッシュが一体なんだったのかと思われる水準まで人民元は対ドル、対円で下落を続けています。
ちなみに2015年8月の切り下げ時の対ドルの人民元レートは6.3889でしたが、いまや6.9を優に超える状況となっているわけですから、その下落振りは尋常ではないことが一目瞭然で理解することができる状況です。
今年2月の「G20」であったと言われる「上海合意」以降中国人民元の話というのは一度たりとも市場で話題になっていませんが、その下落は確実に進行しており、中国当局も資本流失に対して手立てを講じているにも係わらず、確実な結果を得られていないままに元安が進んでいることがわかります。
すでにその下落率は今年に入ってから「6%」を超えており、想像以上に深刻な状況が続いています。
対ドル人民元レート Data Bloomberg
外貨準備も大幅に減少中
3兆ドルを超える中国の外貨準備もここへきて毎月その額を減らす状況にあります。10月短月だけでも450億ドル減少しており、さらに11月は10ヶ月ぶりに10月末からさらに691億ドルも減少しています。
ご存知の方も多いと思いますが、民間人の外貨両替は年間5万ドルと決められており、毎年1月にその額がリセットされることになりますが、今年も正月早々外貨への両替を求める国民が殺到する可能性があり、なんらかの制限が登場することで大混乱が起きることも危惧される状況です。
今年は政治の年ということでほとんど問題視されなくなった中国経済ですが、米国が利上げを行う裏側でその影響をさらに受ける可能性が出てきていることはどうやら間違いないようです。
特に外貨がなくなれば中国は米国債を手放す可能性も高くなり、為替市場に思わぬ形で大きな影響を及ぼすリスクが高まることになります。
2017年は引き続きトランプ政権の行方が市場の注目ポイントとなっていますが、それと並行して中国に思わぬ動きがでることになれば新年早々中国ネタで相場が大きく下落するリスクについても認識しておく必要がありそうです。
市場ではすでに足元のドル高に中国が絡んでいるのではないかとの憶測も出始めており、意外な真打登場に遭遇することになるのかも知れません。
トランプの出現ですっかり市場が変化したように思われがちですが、実際にはこれまでの相場は中央銀行の「金融緩和」によって作り出されたものだけに金利の上昇はこれまでと同じ相場を維持することにはなりません。そのあたりも十分に認識した上で2017年の相場に立ち向かっていくことが必要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)