トランプ政権のスタートが近づき、市場では漠然とした期待感からの相場の上昇というものがすっかり消滅することとなりました。
しかし金融市場の専門家は依然としてドル高がさらに継続するといった見方をする向きが多く、米国経済の成長率もさらに加速するといった明るい見通しを表明するエコノミストが多くなっています。
しかし金利の上昇という重い十字架を背負いながらこれまでの金融緩和があったからこそ示現できた好景気、株高を本当にそのまま引きついでいけるのかどうかについてはかなり疑問も残るところです。今回はこのドル高を示現する要因というものを見ていくことにしたいと思います。
ドル高を口にするエコノミストのロジックとは
ここからの相場がドル高となると指摘するエコノミストのロジックは、多少強弱とプライオリティの違いがあるものの次のようなポイントが多く上げられています。
まず米国経済はトランプ政権の財政政策がたとえ実施されなくても年率で2%程度の成長を維持することができると見る向きが非常に多くなっています。
またこのベースとなる状況にさらに減税や大型の財政出動が上乗せされることなれば2%台後半に迫るさらなる成長と「インフレ」上昇を見込むことができるというのが比較的共通した意見となります。
またインフレに対応するように「FRB」が年3回の利上げを確実に行った場合、日本の「ゼロ金利」釘付け政策とのコントラストはさらに明確になり、ドル円は上昇することが確実になるという見方もドル高を大きく支える見方となっています。
トランプがドル高けん制をいきなりはじめるのではないかといった危惧の念も一方で高まっていますが、強いアメリカ、アメリカファーストの発想は強い米国経済と強いドルを実現させることになるというのがドル高論者の「ファンダメンタルズ」の機軸となっていることは間違いありません。
高金利市場へのシフトは足元の相場からの大きなパラダイムシフト
しかしここ数年米国経済が成長の糧としてきたのは「FRB」を中心にした先進各国の超低金利が大きく寄与したものがベースであることは間違いなく、とくに株式市場にとっては足元で起きているように金利は上昇しても株価も上昇するといった不可解な動きはここからそう長くは続かないものと考えられます。
とくに10年債の米最金利が3%をこえるような事態となれば、株価がこらえきれなくなることは間違いなく、金利の上昇が想像以上に早く進むことになれば、今年の夏を待たずに株価が崩れることでドル円も大きく値を崩す可能性はかなり高くなりそうです。
こうなると高成長、高インフレの経済がトランプ政権で早々に実現すると安易に思い込むのはかなり危険そうです。むしろそれなりの調整がいつくるのかに目を光らせることが暴落相場に巻き込まれない最善の方法ということになりそうです。
通商問題での中国の報復措置も大きなリスク
ここのところやたらとトランプが口にする通商問題の不公平に関しても、米国が高額関税で対応した場合中国など力をもった国がそれに応戦して報復措置をとるリスクはかなり高まることが予想され、この部分のマイナスを一体どこまで市場が織り込んでぢるのかについても疑問が残ります。
過去1年程度を見てみますとエコノミスト予測と言うのは悉く実際の動きから逸脱したものが多く、むしろ8年も継続した米国の株式相場が大暴落ではなくとも20%程度の調整局面に突然入っていってしまうリスクは常に想定しておく必要がありそうです。
トランプ政権ですべてがよい方向に大きく改善するかのような錯覚を起こしている経済見通しも多く見られますが、現実はそう楽観的な見通しに沿ったものにならない可能性が高く、とくに株価の崩れがドル円に影響を与える部分については冷静に予測しておく必要がありそうです。
相場に絶対ということばは存在しないことをあらためて認識すべきです。
(この記事を書いた人:今市太郎)