漢字が読めない、漫画しか読まないわりには酒だけはよく飲むとされる麻生財務大臣がここへ来て公的な場で失言を繰り返しており、本当にこの爺さん大丈夫なの?という状況が示現しつつあります。
国会で円安の水準を自ら口走った麻生大臣
為替については唯一政権の内閣の中で責任者として話しをできる立場にあるのが麻生大臣ですが、円安や円高の水準についてその責任者が具体的な数字を指し示すというのはかなりリスクがあることで、通常はありえない話です。
しかし2月15日に訪米から帰国した麻生大臣は衆議院の財務金融委員会で、「円相場は120円にはいっていない。円安といわれる覚えはない」などと口走り、自ら政権が考える円安の水準が120円であることを自供してしまいました。
今のところ米国側からはそれに対する特別な反応は出ていませんが、ペンス副大統領はかなりの強敵であり、具体的な円安水準について要望と協調を求められることになれば、日銀が現在行っているゼロ金利釘付け政策も米国の利上げドル高にあわせて日本側の利上げ措置を考えなくてはならない可能性がもあり、決して穏やかな話ではありません。
そもそも為替は需給で動くものですから、二国間で一定の水準以上には動かないようにするなどということをFTAの中に織り込むようなことになれば一大事であることは間違いありません。
麻生大臣はうっかり本当のことを言ってしまったのでしょうが、脇の甘さはかなりのものということができそうです。
節分の日にさらに閣議後会見で本当のことを口にする失敗も
この麻生大臣、訪米前の2月3日にさかのぼっても閣議後の記者会見でうっかり本当のことを言ってしまうという失態をやらかしています。
しかし、国内外の市場関係者や投資家が認識している円安誘導を公的に認めるようなおめでたい発言をしたことだけは事実で、この爺様がペンスや米国のその他の高官と向き合って何事もなく日本の金融政策が評価されるのかどうかは相当怪しくなってきていると言わざるを得ません。
トランプとゴルフと度重なる会食をしただけでは埋まらない通商の溝はかなりはっきりしてきており、政権の閣僚が承認されてからの日米の協議の方向がどうなるのかが注目されます。
シムズ理論に興味をもつ黒田総裁
一方日銀の「黒田総裁」は2月14日、衆議院の予算委員会に登場し、「金融政策」ではなく財政政策が物価を決定するとうい物価水準の財政理論(FTPL)について非常に興味深いと述べて市場の注目を集めています。
このFTPLとは物価引き上げのためには政府が債務の一部を増税ではなく「インフレ」で帳消しにすると宣言すべき、という考え方で、先ごろ来日したノーベル賞受賞学者のシムズ米プリンストン大教授が提唱しているもので、「ハイパーインフレ」を引き起こせば1100兆円に迫る日本の債務も確かに一気に減らすことは可能になります。
しかしそうなると国民が強いられる負担は只者ではなくなり、国は残っても国民はぼろぼろになるのは間違いなく、「中央銀行」の総裁がこれに興味をもっているとなると「金融緩和」の最後の出口戦略に本当に使うのではないかとかなり心配になってきます。
日米首脳会談を受けて本邦勢だけがなぜか胸をなでおろす結果になっていますが、ドル円は決して上昇傾向にはなっておらず、世界的に見ると市場は円安の可能性にかなり冷ややかになりつつあるともいえます。
そこのさらに存在自体が心もとない大臣が登場して状況を悪化させないことだけは切に祈りたい気分ですが、いくらお祈りしても厳しい現実はやってくることになるのではないでしょうか?
(この記事を書いた人:今市太郎)