就任早々大統領令を連発し、主要国との首脳会談もスタートさせ、最初から全力疾走の感があるトランプ政権ですが、実は米国内での詳細報道を重ね合わせてみますと日本から見ているほど好調な走り出しではないようです。
人事の面ひとつとってみてもかなり様子がおかしくなってきているという指摘が、金融市場関係者からも聞かれるようになってきています。
なんとなくドル円などにも停滞感が出始めているのはこのためだという見方もでてきているようですが、どこまでが本当の話なのかを見極めることは相変わらず極めて難しいものの政権運営がうまくいっていないのはどうやら紛れもない事実のようで、今後どのように建て直しがはかられることになのかに注目が集まります。
政権人事のフィックスがまず建て直しの第一段階
政権発足後、大統領側近のマイケル・フリン国家安全保障担当補佐官が早くも辞任し、労働局長に指名さらたはずのアンディ・パズダー氏は議会の承認が得られないことから辞退ということでトランプ大統領はこの労働局長の人選に躍起になっているようです。
足もとでは複数の人物の名前が挙がっているようですが、まだフィックスされたわけではないようです。
人事ではありませんが先ごろ突如として署名してしまった移民・難民の入国禁止に関する大統領令もその解釈をめぐって大統領側近からもかなり仲たがいが明確になってきているようで、こちらは再度大統領令を出しなおす事態に追い込まれているようです。
日本の官僚組織と違って、政党政権が変われば事務方もすっかりクビがすげ変わる米国のことですから初期段階がすっきりしないのはある意味仕方ないことではありますが、予算教書も閣僚がフィックスしないのでは簡単に出せない状況で、まずは2月28日に予定される大統領の議会証言でどのような内容が語られるのかに関心が集まっています。
減税とインフラ投資の中身を詳らかにすることが第二段階
減税については近いうちに凄いプランが登場すると大統領本人が語っていますので、なんらかの骨子は出来上がっていると思われますが、議会でそれが承認されるかどうかは別としてもとにかくもう少し具体的なプランが登場すれば株も為替もさらに上昇に弾みがつくものと思われます。
またインフラ投資についてはそもそも貿易赤字の解消をネタに税収を増やしてそれを充当しようという目論みがあるようですから順番が後になりつつあるようですが、ムニューチン氏が議会承認されたことで多少は前に進むようになったのではないかという観測が広がっています。
意外と重要な人物になりつつあるゲーリー・コーン
どうもがたつきが収まらない不協和音のトランプ政権の中にあって着々と座を築きつつあるのがNEC(国家経済会議)の議長である「ゲーリー・コーン」経済担当大統領補佐官とみられます。
この人物はムニューチン氏と同様にゴールド万サックスの出身で社長兼COOを勤めてきただけに補佐官などというタイトルでは想定できないほどの大物であり、とくに経済政策の面では政権内で大きな手腕を発揮することが期待される人物です。
これまでは対中戦略の強硬派であるピーターナヴァロの存在が非常に注目されてきましたが、ここからは多少そのバランスが変わることになるのかも知れません。
予算教書の実務面を取り仕切るのはOMBのマルバニー局長で、こちらもあまり寝立たない存在でしたが、もともと共和党の下院議員であり、強烈な歳出削減論者として知られてきただけにトランプの掲げる猛烈な財政出動との親和性はかなり低く、一体この政権でどのような予算のとりまとめをしてくるかに注目が集まりつつあります。
依然として市場はトランプ政権の政策に期待を寄せていますが、こと為替に関する限りはそれだけで大きくドルが買われにくくなってきており、具体的な好材料がでるのを待っているというのが現実の状況です。
減税と財政出動の関係である程度内容のわかるものが登場したときに期待が失望に変わるようなことになれば大統領の議会証言が実施される2月28日、日本時間では事実上3月1日段階の相場にその方向性が現れる可能性が高まっており、この結果を見るまでは一旦今週中にポジションは手仕舞ておくことも必要になりそうです。
(この記事を書いた人:今市太郎)