ほとんど目新しい内容の無かったトランプ演説を受けて、逆に安心したのかNYダウがさらに走り始めています。
利上げ観測にもほとんど無関心で相場は上げまくっていますが、現実に金利が上昇を始めた場合、最初に影響がでるのが株価であるだけに、あまりにも楽観的な動きをしている状況がいつ大きく変化するかが注目されるところです。
NYダウは足もとでは完全に上昇トレンドに入っており、さらに上昇しそうな気配が強まっていますが、3月15日の「FOMC」で本当に利上げが実施された場合、いきなりその流れにブレーキがかかることは間違いなく、ここからはトランプ発言よりも「FRB」の利上げに市場の注目が集まることになりそうです。
NYダウ 推移 出展ブルームバーグ
3月利上げならば初夏を待たずに相場は大きく下落か
相場は大きく下落する前にだいたい猛烈に走り始めて上昇するものですが、足もとでのNYダウの動きはそれに近いものを感じるところがあり「FRB」の利上げが再開されますと必ずなにか動きに変化が現れることになりそうで、かなり注意が必要です。
日経新聞の解説では米国の場合利上げは利率の問題ではなく、利上げ開始から3回目まではなんとか株も債券も関係なく上昇する時間が続くそうですが、3回目を超えたところから必ず株式相場が金利の上昇に耐えきれなくなるタイミングが訪れるとのことで、下落時期は必ずしも金利上昇直後とは限らないようですが、それほど時間を経過しないところで大きな調整が入っているのが過去のケースからわかってきているようです。
現状では決してドル円は株式相場の堅調さに追随しているわけではありませんが、株価が下落して相場がリスクオフになるとドル円も下落することになるため、かなり注意が必要になります。
長短金利カーブに注目
米国の長短金利のカーブ(イールドカーブ)に関しては、FT(ファイナンシャルタイムズ)のページで確認ができますのでその推移をみていただければと思いますが(https://markets.ft.com/data/bonds)以下のグラフの傾きが完全にフラットに寝てしまうようですと株価の下落がかなり近づくことになります。
足もとではまだ利上げが再スタートにはなっていませんので一定のカーブが描かれていますが、今後「FRB」が利上げを行うことで左の手前からのカーブがなくなったときにだいたい米国の株式市場は大きく下落しています。
タイミングは判りませんが、数日に1回程度はこのサイトを見て状況をチェックすることがこの時期には必要になってきそうな状況です。
イエレン議長は本当に利上げを行うのか?
米国のメディアによる情報では、ムニューチン財務長官が2月28日に「イエレン議長」と会談を行っていることがわかっています。
まずは顔合わせなのかも知れませんが、同財務長官は今後当面金利は低金利のまま上昇しないことになると、ある意味で「FRB」の領域に踏み込んだ発言をしており、空席になっている「FOMC」に参加する理事の人選も共和党系の人物を送り込んでくることはほぼ間違いないものと思われます。
果たしてこれで「イエレン議長」が3月に利上げを断行するのかどうかが、かなり大きな注目点となりそうです。3月利上げを断行して株価が大きく崩れることになれば、トランプ大統領は当然「FRB」の責任であると言い出すはずですし、果たして「イエレン議長」にそこまでの勇気があるのかどうかも気になるところです。
トランプ政権になってから市場のセンチメントが大きく変わったような印象を多くの市場参加者が抱いていますが、実際の相場には新しいことは何一つ起こっておらず、トランプ政策が現実のものになるまでにはかなり時間がかかりそうです。
したがってここで勇み足のように市場を締めてかかる動きになった場合、株も為替もこれまでとは異なる動きに転じるリスクについて、より意識しなくてはなりません。
現状では市場は金利上昇のリスクを全くといっていいほど織り込んでいませんので、いきなりブレーキがかかることによる大きな変化がより大きな下落を招く可能性についてしっかり意識しておくことが重要です。
(この記事を書いた人:今市太郎)